2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻が続く一方、2023年はイスラエルとパレスチナ・ガザ地区の戦闘が勃発し、民間人が悲惨な状況に置かれ、多くの命が失われています。国際社会が惨劇を食い止められずにいる中、アムネスティ・インターナショナルはガザでの即時停戦を求めて世界中で要請活動を行い、日本でも停戦に向け積極的に関係各所に働きかけるよう日本政府に要請しました。

また、2023年も、正義、自由、平等を求めて声を上げた人びとに対して警察や軍隊が過剰な暴力や武力を用いて取り締まるなど、人権を守るために活動する人びとへの弾圧が世界で続きました。この事態に対しアムネスティは、抗議する権利を守るためのグローバルな活動を行い、アムネスティ日本でもオンラインでの署名活動を展開しました。

国際的に行ったキャンペーン

ガザ・イスラエル危機 人道の大惨事に終止符を!

ガザ地区での即時停戦に向けた積極的な行動を求める要請書および署名を日本政府に提出

10月7日以降、イスラエルとハマスなどの武装勢力との間の戦闘が激化し、多くの民間人が犠牲になっています。民間人の犠牲を食い止めるため、アムネスティは即時停戦を求める署名活動を世界中で展開。12月27日に深澤外務大臣政務官と面会し、日本で集まった署名11,844筆を提出すると共に、国連安保理の理事国として、当事国、安保理理事国、関係諸国に対し、持続的な即時停戦への働きかけを強めるよう、日本政府に要請しました。面会には、牧山ひろえ議員、石川大我議員、井上哲士議員もご同席くださいました。

その他にも、元・国連パレスチナ駐在員の髙橋宗瑠さんを講師に招き、歴史的経緯を分かりやすく解説していただいたウェビナーや、長年ガザの問題を追ってきた映画監督、古居みずえさんの映画上映&トークイベントを開催しました。また、デモにも参加し、みんなで声を上げ、即時停戦を訴えました。

緊急対応

袴田巖さん(87歳)に一刻も早い正義を!

袴田巖さんの裁判で、検察に対しねつ造の疑いのある証拠の排除と迅速な結審への協力を求める署名17,997筆を静岡地検に提出

アムネスティは、えん罪の可能性が非常に高いにもかかわらず43年前に死刑が確定した袴田巖さんの再審を求めてきましたが、2023年、袴田さんの再審がついに実現しました。2014年に一度再審開始が決定されたにもかかわらず、検察の不服申し立てで2018年に決定が覆され、その後、最高裁判所が審理のやり直しを命じていましたが、3月、東京高等裁判所により再審が決定されました。アムネスティ日本は9年の歳月を無駄に費やした愚行が繰り返されてはならないと、不服申し立てをしないよう検察に求める緊急署名を、決定が出たその日に開始しました。

検察は抗告を断念し再審開始が確定。10月にようやく再審裁判が始まりました。しかし、検察が再審裁判で有罪を立証する方針を打ち出したのを受け、アムネスティは世界中のメンバーと共に、検察に対しねつ造の疑いのある証拠の排除と迅速な結審への協力を求める署名活動を行い、10月25日、日本を始めオランダ、スペイン、イギリスなどから集まった17,997筆の署名を静岡地検に提出しました。また、11月には、袴田さんの事件を通して死刑廃止を考える勉強会を、袴田さんの出身地である静岡で開催。姉のひで子さんを招いて事件についてお話しいただくとともに、世界中のアムネスティから届いた袴田さんを応援するビデオメッセージを、巌さんと姉の秀子さんに届け、たくさんの国の人たちが関心を寄せていることを伝えました。

国内法制度の取り組み

難民・移民の権利を守る

3月に閣議決定され国会に提出された難民認定法(入管法)の改正法案は、ノン・ルフールマン原則に反し、庇護を求める人を命の危険のある地域に強制送還できるようにするなど、国際人権基準を満たさないものでした。アムネスティ日本は、入管に収容されている庇護希望者や非正規滞在者が置かれている人権侵害の状況を改善するため、国際人権法・基準に則った改正にするよう、署名活動や院内集会、公開書簡などを通して、日本政府および入管庁に要請しました。

また、難民申請中の高校生を描いた映画『マイスモールランド』の無料上映会を全国約20カ所で開催し、非正規滞在の外国人が直面している過酷な現実を、映画を通して多くの人に伝えました。 3月には、2022年にアムネスティ国際事務局の調査員が来日し、入管施設の被収容者・元被収容者、出入国在留管理庁(入館庁)職員などへの聞き取り調査を行った結果を、プレスリリースで全世界に配信しました。

死刑廃止

5月、最新の統計をまとめた報告書「2022年の死刑判決と死刑執行」を発表。10月9日の国際死刑廃止デーには「響かせあおう死刑廃止の声2023」を他団体と共同で開催しました 。そのほか、死刑廃止ネットワークチームが中心となり、東京と大阪で定期的に「死刑廃止を考える」入門セミナーを行い、啓発活動を中心に、日本の死刑制度の問題を広く伝えました。東京では、死刑に関する意見や疑問を持つ人たちが集まって自由な議論を行う「みんなで話そう、死刑のこと」をスタートさせ、8月と12月の2回、イベントを開催。大阪では10月、死刑に賛成する国民があげる一番大きな理由が「被害者やその家族の感情」であることから、父親を殺害された被害者家族をゲストに招いた講演会を行い、何をきっかけに死刑廃止を訴えるようになったのかを語っていただきました。

気候変動に伴う人権侵害をなくす

気候変動にともなう人権侵害から人びとを守るため、化石燃料、特に石炭の利用を廃止し、人権に配慮した再生可能エネルギーにシフトするよう日本政府に求めるオンライン署名を、昨年に引き続き行いました。また、4月と9月に参加した環境問題を考える大規模イベントでは、バスケットボールを取り入れたユニークなアクションを行い、多くの人が楽しみながら#endcoalを訴えました。他にも、ユースネットワークが中心となって、ワークショップやセミナー、ユース向けの国際交流会を多数開催し、国内外から集まった参加者が、気候変動によって引き起こされる人権問題への理解を深め、自分たちができることについて話し合いました。

ビジネスと人権

昨年に引き続き、「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム(BHRC)」の幹事団体のひとつとして活動を行いました。 ビジネスと人権チームが中心となり、定期的に入門セミナーを開催。6月には、アパレル業界とそのサプライチェーンをめぐる人権課題を考えるオンラインセミナーを、業界の透明性を高めていくグローバルな運動「Fachion Revolution」の日本代表団体からゲストスピーカーを招いて実施しました。また、国際事務局が9月に発表した調査報告書「脱炭素社会の落とし穴:コンゴ民主共和国の工業用コバルト・銅鉱山における住民強制立ち退き」を翻訳し、Webサイトで公開しました。

そのほかの日本政府への働きかけ

G7広島サミット開催を控えた日本政府に対し人権に関する抜本的な制度改革を要請しました。また、国連人権理事会による日本の人権状況の審査では、政府に向けた提言を発表しました。他にも、ミャンマーの人権や中国の人権改善に向けて、日本政府が行動をすることを求めました。

2023年に展開したオンラインアクション・署名

イベント

チベット出身の映像作家ドゥンドゥップ・ワンチェンさんの講演会

ドゥンドゥップ・ワンチェンさんは北京オリンピック開催について、チベット人100人以上の声を映像に収めて配信したことで、2008年に中国で逮捕されました。政治犯として6年の獄中生活、4年の中国での軟禁生活を経て、2017年、奇跡的に米国に亡命しました。彼と家族が初来日し、東京、愛知、広島、神奈川の4カ所で講演会を開催しました。講演会では、チベット自治区で行われているの民族浄化などチベット弾圧の実態をお話しいただきました。

人権デーイベント:YOUR VOICE CAN CHANGE THE WORLD

「あなたの声で、世界が変わる。」をテーマに、「せやろがいおじさん×能條桃子さんのスペシャル対談」や、アムネスティの元調査員と李孟居さんを招いての現在の中国の人権状況についての講演、死刑廃止や社会を変えるためのワークショップ、ウクライナの写真展&トークなど、さまざまなイベントを行いました。

ライティングマラソン2023

ライティングマラソン

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人たちの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。フラッシュモブやコンサート、マラソン大会など、2023年も世界中でさまざまなイベントが開催され、5,828,323通の手紙やハガキ、署名が関連当局や人権侵害に遭っている人たちに届けられました。日本国内でも、27のグループとチームが全国各地でイベントを行いました。

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