オーストラリア最北端に位置するトレス海峡にあるボイグ島とサイバイ島で、気候変動により住民が大きな危機に瀕しています。海面上昇が急速に進み、甚大な被害がいくつも発生しているのです。
2つの島の住民の多くは先住民族です。2021年10月、それぞれの島の先住民族のリーダーであるパバイさんとポールさんが、オーストラリア政府に対し裁判を起こしました。気候変動を引き起こす原因となる温室効果ガスの排出を抑える対策を、政府に講じさせるためです。
海面上昇により2つの島では、子どもたちの遊ぶ美しい砂浜が浸食され、神聖な遺跡が破壊されています。さらに塩害(塩が作物や建物に引き起こす被害)によって畑は荒れ、道路や下水処理施設、発電所といったインフラが機能しなくなっています。「島は私たち自身であり、島を失うことは自分自身を失うことだ」と2人は語ります。
このままでは島には人が住めなくなり、島民は生まれ育った大切な場所を失うことになりかねません。 彼らの暮らす島と文化、そして未来を守るため、いっしょにオーストラリア政府に対して二酸化炭素排出削減を求めてください!
期 間: | このアクションは終了しました。(2023年11月17日~8月19日) |
要請先: | クリス・ボウエン 気候変動・エネルギー担当大臣 |
ボイグ島とサイバイ島の人たちは何千年もの間、島と共に繁栄してきました。しかし、どちらの島も小さく海抜が低いために、海面上昇の影響を受け、今まで通りの生活を続けることが困難になりつつあります。トレス海峡の海面は、世界平均の2倍の速さで上昇しています。そのため、海峡のある島の住民たちは暴風雨や「キングタイド」(新月や満月に発生する例外的な高潮)が来るたびに洪水の被害に遭っています。こうした洪水は人びとの家屋に被害を与え、土壌の塩害によって、タロイモやキャッサバのような主食となる食料の栽培に大きな影響を及ぼしています。
パバイさんとポールさんは、先祖代々受け継がれてきた土地で暮らすことができなくなり、出ていかなくてはならなくなってしまうことを危惧しています。彼らは、ただでさえ先住民族としてオーストラリア国内で特に弱い立場にあります。彼らの暮らしや文化を守り、未来につなげていくためには、よりいっそう手厚い支援が必要であるといわれています。そして、環境の大きな変化によって平穏な暮らしを脅かされている問題は、オーストラリアに限らず世界の至る所で起こっているのです。
オーストラリア政府は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で43%削減すると発表しました。しかし、気候に関するオーストラリアの団体の科学者は、世界平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑えるという世界目標を達成するためには、43%という目標では不十分であり、実際には74%削減する必要があると指摘しています。2021年の10月から始まったオーストラリア政府に対する2人の裁判では、「2050年までの気温上昇を1.5度に抑えることにより海面上昇を抑え、島の文化、生活、そして人々のアイデンティティを守る」ことを求めています。
日本に住む私たちにもこの問題は決して無関係とは言えません。温室効果ガスの約7割は二酸化炭素と言われ、日本は世界第5位の二酸化炭素排出国です(2020年)。二酸化炭素は主に石炭や石油などの化石燃料の燃焼で排出されますが、日本の排出量で最も多いのが石炭由来で、その石炭は世界最大の輸出国であるオーストラリアから多くを調達しています。私たちの日々の暮らしが、オーストラリアの資源を使ってトレス海峡の海面上昇を引き起こす一因となり、ひいてはボイグ島とサイバイ島の先住民族の生活を奪うことにつながっているかもしれません。