日本:G7議長国として国際人権法・基準に則った制度改革を

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 公開書簡
  4. 日本:G7議長国として国際人権法・基準に則った制度改革を
2023年5月17日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:

2023年5月17日

内閣総理大臣 岸田文雄 殿

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
キャンペーン部門マネージャー 武田 伸也

 

G7議長国として国際人権法・基準に則った制度改革を

 

私たちアムネスティ・インターナショナルは、1961年の創設以来、すべての人が世界人権宣言にうたわれている人権を享受し、人間らしく生きることのできる社会の実現をめざし、世界の人権運動をリードしてきた国際人権団体です。

今年5月19日より、第49回主要7か国首脳会議(G7サミット)が広島にて開催されます。日本政府は、この広島サミットを「自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7首脳」の意見交換の場であると位置づけています。しかしながら、議長国である日本は国際人権法・基準を満たさない法制度を多く存置しています。長きにわたって国内外から繰り返し指摘を受けていながら、制度改革は遅々として進まず、今も多くの人権侵害が見過ごされたままです。

その一例に死刑制度があります。1991年には国連の死刑廃止条約(自由権規約第二選択議定書)が発効され、国際社会全体で死刑のない世界を目指すことが合意されました。それから30年以上が経ちますが、死刑制度を維持し続けているのは、G7国では日本だけです。日本政府は死刑に関して秘密主義を貫き、死刑制度のあり方についての国論的議論もない中で世論調査を行い、その結果で制度の維持を正当化して、処刑を続けています。

また、難民・入管問題については、「出入国管理及び難民認定法案」が国会に提出され、衆議院本会議では可決されました。この法案は命が脅かされるおそれがある国への追放・送還を禁じた難民条約のノン・ルフールマン原則を損なうなど、重篤な人権侵害を引き起こすおそれのある内容ですが、その危険性が充分に理解されないままに審議が進められています。

LGBT問題に関しても、今年3月にG7のうち日本を除く6カ国が、LGBTの人権を守る法整備を日本に促す書簡を取りまとめたことが大きく報道されました。日本政府は多様性社会の実現のための法整備に対し、「伝統的家庭観」などこれまでの価値観に固執しており、議論はほぼ膠着している状況です。これまでの価値観に固執し、当事者の声や国際機関の勧告を無視することは、普遍的である人権そのものを否定することとなり、当事者を精神的、身体的、社会的に追い詰めています。

このように人権の視座に欠けた日本の法制度に対し、国際社会はよりよい日本社会への期待を込めて、変革を求めてきました。人権を一つの共通価値として掲げるG7の議長国であるならば、これらの勧告に耳を傾け、国際社会、そして日本の市民社会と連携して、「人権は普遍的である」と定めた国際人権法・基準を軸に、一時的な対応で終わらせない抜本的な制度改革を推し進めることを強く求めます。

以上