死刑廃止 - 最新の死刑統計(2025)

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世界の動向(2026年5月21日更新)

アムネスティの調査によれば、2025 年の世界の死刑執行総数は過去44 年間で最多となり、2024 年に比べ78%増、少なくとも2,707 人が処刑された。激増の背景には複数の国の当局が、支配力を強め、国家権力を誇示し、政治的な支持を得ようとして、問題のある治安対策のもと「犯罪に厳しい姿勢」を打ち出し、その対応の中心にこの残酷な刑罰を据えたことがある。この傾向は、市民社会の活動を制限し、 反対意見を封じ、国際人権法や国際基準のもとで確立された死刑に関する保護措置を蔑ろにすることで権力の掌握を強めている国々で最も顕著であった。

死刑執行数の急増は主にイランでの増加によるものだ。同国の死刑執行数は少なくとも2,159 件と、2024年の2 倍以上、過去数十年で最多となった。イラン当局は、国民に恐怖を植え付け、イラン・イスラム共和国の体制に異議を唱えた者、あるいは異議を唱えたとみなされた者を処罰するために、著しく不公正な裁判を経て、死刑を武器として使い続けた。例えば、2022 年の「女性・命・自由」抗議運動に関連し て2 人の男性が処刑されている。また当局は、2025 年6 月のイスラエルによるイランへの軍事攻撃を受け国家安全保障の名目のもと、スパイ行為やイスラエルとの共謀を疑われた者に対する死刑の適用を強化し、こうした容疑で11 人の男性を処刑した(6 月の攻撃前には2 人)。

サウジアラビアでは当局が薬物犯罪を処罰するために死刑執行を続け、過去最多だった2024 年を上回る執行数を記録した。また、広範に定義されたテロ関連犯罪に対して死刑を適用、その多くは2011 年から2013 年にかけて「反政府」抗議活動を支持した同国で少数派のイスラム教シーア派に属する人びとが対象だった。

例年と同様、2025 年の総数には、アムネスティが中国で執行されたとみる数千件の死刑は含まれていない。同国では死刑に関するデータは依然として国家機密だが、当局による開示情報や説明からは、公共の安全や安定に対する脅威を決して容認せず、秩序を維持するために厳しい処罰を科すという姿勢を打ち出すために、死刑が意図的に利用されていることが、あらためて見て取れる。これは、金融セクター の汚職対策や、私利私欲のために職権を乱用して有罪となった者への処罰において、死刑の適用が際立っていたことにも表れている。公開情報では、贈収賄やその他の金融犯罪に対して言い渡された死刑判決数が増加していた。

米国ではフロリダ州の死刑執行数が前例のない水準で増加し、死刑執行の全国総数は2009 年に次ぐ多さだった。これは、連邦レベルおよび一部の州の当局者が、死刑とその犯罪への影響について扇動的で欠陥のある言説を広め、死刑の適用拡大を提唱したためである。

世界的な「麻薬戦争」における極めて懲罰的な手法の復活も、一部の国で死刑執行数が増加した要因の一つとなった。全死刑執行のほぼ半数(1,257 件、46%)が、中国、イラン、クウェート、サウジアラビア、シンガポールの5 カ国における、薬物犯罪に対するものだった。アルジェリア、クウェート、モルディブの当局もまた、薬物犯罪に対する死刑の適用範囲を拡大するための立法措置を進めた。

同様にブルキナファソ政府は、「反逆罪」「テロリズム」「スパイ行為」などの特定の犯罪に対する死刑の復活が盛り込まれた刑法改正法案を採択し、ミャンマーでも選挙を控えて死刑の適用範囲が拡大された。チャドとペルーの当局は、死刑復活の可能性を検討する委員会を設置。また、イスラエル当局は、パレスチナ人を標的とした死刑の導入と適用を促進する差別的な法案を提出した。ナイジェリアでも、2013 年のテロリズム防止・禁止法を改正し、誘拐、人質事件、およびその他の関連犯罪を絶対的法定刑(量刑の裁量のない刑罰)として死刑が科されるテロ行為に指定することを求める法案が、上院に提出された。

死刑執行数が過去最高を記録した一方で、2025 年の統計は、死刑制度を維持している国が依然としてごく一部の少数派である実態も示す。ベラルーシでは、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が1994 年に就任して以来で初めて、死刑判決も執行もなかった。南北アメリカ地域では、17 年連続で米国が死刑を執行した唯一の国であり、米国内では全執行件数の半数近くがフロリダ州で行われたものだった。サハラ以南のアフリカにおける死刑執行は、過去10 年間で執行のあった5 カ国のうち、ソマリアと南スーダンの2 カ国に限られた。また、南アジアで死刑を執行したのはアフガニスタンのみ、ASEAN 諸国ではシンガポールとベトナムのみで、太平洋地域で法律上死刑を維持しているのはトンガのみだった。中東・北アフリカ地域では、地域全体の執行数の96%がイランとサウジアラビアにおけるものだった。

2025 年には4 カ国(日本、南スーダン、台湾、アラブ首長国連邦)が数年ぶりに死刑を執行したが、死刑執行が確認された国の総数は17 カ国で、年間20 カ国以下という2018 年以降の低い水準のままだった。

国際人権の枠組みがかつてない存亡の危機に直面している世界情勢の中、死刑廃止に向けた進展は続いている。ベトナム当局は、麻薬の運搬、贈収賄、横領など8 つの犯罪について死刑を廃止した。ガンビアでは、殺人罪、反逆罪、その他の国家を脅かすとされる犯罪について死刑が廃止された。

レバノンとナイジェリアの国民議会では、死刑廃止法案が審議中である。キルギスの憲法裁判所は、同国における死刑の再導入の試みを違憲だと断じた。

アラバマ州のケイ・アイヴィー知事は、ロッキー・マイヤーズに恩赦を与えるという歴史的な決定を下した。同州で1976 年に死刑が復活して以来、黒人の死刑囚に対する初の恩赦であり、死刑囚への恩赦としても2 例目となる。ジンバブエでは、既存のすべての死刑判決が減刑された。

アムネスティは死刑に無条件に反対しており、1977 年以来、世界中で死刑廃止運動を展開してきた。当時すべての犯罪について死刑を廃止していた国はわずか16 カ国だったが、2025 年末までにその数は113カ国に増えた。

2025年死刑執行国

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