2019年は世界各地で抗議デモや集会が相次いだ年でした。格差の拡大や政治的腐敗などによって不当な仕打ちを受けた人びとが、自由と平等を求めて立ち上がり、世界各地で声を上げる一方で、過剰な暴力や武力を用いた警察や軍隊による取り締まりによる人権侵害も頻発しました。
アムネスティは昨年に引き続き、人権のために活動する人たちとともに行動し、声を上げることで世の中を変えていく「BRAVE」キャンペーンや難民の命を守る「I WELCOME」キャンペーン、LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーンなどに取り組みました。
国際キャンペーン
「BRAVE~声を上げる勇気~」キャンペーン
©︎ Amnesty International IRELAND
今、自由や平等、正義のために闘っている人たちが、嫌がらせや脅迫、暴力といった攻撃を受けています。「BRAVE」とは、こうした状況に負けずに、時には命を懸けて、果敢に声を上げ続ける勇気ある人たちのこと。アムネスティは昨年に引き続き、人権活動家と一緒に声をあげるキャンペーンを世界中で行いました。日本では、イラン、エクアドル、フィリピンの人権活動家の状況改善を求める署名活動に加え、フィリピンで環境問題に取り組む女性活動家を招聘し、東京と大阪で講演会「気候危機から未来を守るのは私たち」を開催しました。また、活動家が置かれている状況を身近に感じてもらおうと、海外の活動家とオンラインで直接会話をするスカイプ講演&交流会「世界の人権活動家と語り合おう!」を開催しました。
「I WELCOME 難民の未来は、あなたがつくる。」キャンペーン
「アースデイ東京2019」でのフォトアクション ©︎ Amnesty International Japan
紛争で、ひどい差別で、極度の貧困で、宗教弾圧で・・・。今、世界中で難民が増え続けています。昨年に引き続き、難民の命と安全を守るために、世界各国が難民を保護する責任を公平に果たすよう働きかけるキャンペーンを行いました。「日本に難民を受け入れよう」という市民一人ひとりの声を日本政府に届ける署名活動では、2016年のキャンペーン開始から累計5,764筆が集まりました。難民の人たちへの偏見をなくし、受け入れに積極的な世論を形成するため、10月から12月にかけてVR(バーチャル・リアリティ)映像を通して難民の経験を疑似体験するイベントを全国12の地域で開催。その他にも、映画『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島』上映会&トークの開催や、難民問題を大人だけではなく子どもが理解できるように、子ども向けイベント「絵本を読んで難民について考えよう!」を実施しました。
緊急対応
左:「ウイグル人強制収容証言集会」/右:講演会「緊迫の香港情勢」 ©︎ Amnesty International Japan
中国の新疆ウイグル自治区で、カザフスタン人やウイグル人など、大勢の少数民族が「再教育」の名の下で拘束されている問題について、アムネスティ日本は2018年、収容所から生還を果たしたオムルベク・アリさんを招いて講演会を行いました。2019年は1年を通して、その講演会を記録したDVD上映会を全国各地で行いました。7月には、「ウイグル人証言集会~中国新疆ウイグル自治区・ムスリム強制収容を語る~」を開催。2015年から18年に3回強制収容されたメヒルグル・トゥルスンさんが、アメリカで収録されたビデオ映像で収容所での体験を語るとともに、在日ウイグル人9名が自身や親族、友人達が収容所に入れられ、悲惨な日々を送った体験を証言しました。また、香港で大規模なデモが行われていた12月には、アムネスティ香港支部の事務局長が来日。東京と大阪で講演会「緊迫の香港情勢」を行い、緊迫する香港の実情を伝えました。
国内法制度の取り組み
LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーン
東京レインボープライド2019にて ©️ Amnesty International Japan
性的指向や性自認を理由とした差別禁止の法制化によってLGBTに対する差別をなくすため、2017年から引き続きキャンペーンを行いました。東京都や厚生労働省の関連施策について、LGBTに対する差別が適切に防止されるよう、パブリックコメントで意見を提出するとともに、市民社会にも同様の意見提出を呼びかけました。また、自治体が抱える問題の把握やその改善に取り組むため、200の地方自治体に対してLGBTに関する施策アンケート調査を行いました。
死刑廃止
4月に報告書「死刑判決と死刑執行2018」を発表し、同日実施した議員連盟による勉強会では、死刑廃止について国会議員の理解を促進しました。8月2日に2人、12月26日に1人に対して死刑が執行された際には、死刑執行に対する抗議声明を発表し、他団体と協力して記者会見や抗議行動を行いました。一般の人たちに死刑制度の問題点を広く伝えるため、死刑廃止ネットワークが中心となり、「死刑廃止入門セミナー」を東京と大阪で毎月開催したほか、死刑囚の著書などを題材にした「いのちを考える読書会」を実施しました。また、危機にある個人として支援を行っている袴田巖さんの再審開始を求める集会を他団体と協力して行いました。
死刑執行に対する抗議行動 ©️ Amnesty International Japan
イベント
スウェーデンの歌手メイヤさんのトーク&ミニライブ
©️ Amnesty International Japan
アムネスティの会員であるメイヤさんは、以前から人権問題に関心を持ち、活動に取り組んでこられました。「アムネスティのために何かしたい」と、トーク&ミニライブが実現しました。メイヤさんは、米国で40年以上独房に入れられていたアルバート・ウッドフォックスさんについてのアムネスティの記事を読み、あまりに不当な扱いに憤りを感じて、彼に手紙を出しました。そして、その返事にインスパイアされて「黄色いリボン(Yellow Ribbon)」という曲を作っています。トークではウッドフォックスさんについてどのように知り、なぜ手紙を送ろうと思ったのか、また、日本の死刑制度に対する思いや、メイヤさん自身の問題に対する葛藤などを語ってくださいました。
ライティングマラソン2019
暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人びとの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2019年は世界中で660万を超える手紙や署名が届けられました。日本国内でも、日本全国にある29のグループとチームが参加し、2,700通の手紙を届けました。対象10ケースのうち4つに関しては、オンラインでも署名を呼び掛けました。
2019年に展開した主なオンラインアクション
オンラインアクションは 19本を公開、延べ約 32,000 人が参加しました。