「声を上げることを恐れなければ、世界は変わる」―マリネル・スモーク・ウバルドさん
2019年10月、地球温暖化の問題に取り組む活動家、マリネル・スモーク・ウバルドさん(22歳)をフィリピンからお招きし、東京と大阪で講演会を行いました。講演会には大学での講演もあわせ、延べ500人の方がご来場くださり、皆さん、マリネルさんの言葉に真剣に耳を傾けていました。
2013年11月、史上最大級の猛烈な規模の台風ヨランダがフィリピンに上陸し、マリネルさんの住む村を襲いました。その被害は甚大で、1,600万人の被災者を出しました。WHO世界保健機関によると、死者の数は6,000人以上、負傷者は28,000人に上りました。当時、マリネルさんはわずか16歳でした。
この甚大な被害から6年がたちましたが、復興は十分に進んでいません。政府は家を失った人たちのために約20万戸の住宅建設を計画しましたが、完成したのは半分あまり。その家々も、電気や水が通っておらず、半分は空き家のままです。そうした理由から、多くの人たちは今も海岸沿いの同じ場所に住んでいます。
こうした状況を何とかしようと、マリネルさんは立ち上がり闘うことを決意します。彼女は安心して暮らせる家を建てるよう政府に働きかけるだけではなく、巨大台風が生まれる原因となる地球温暖化の問題についても、行動を起こします。
「台風ヨランダの経験を語るのは、6年たった今でも、とても辛いです。生きる意味を失くした時もありました。でもその一方で、自分の経験を世界に伝えることで私は強くなり、傷が癒されていくのを感じています。私が語ることが、コミュニティを守ることにつながるからです。
今、私たちが行動を起こして何とかしなければ、気候変動による被害は世界中に広がります。もはや、将来の話ではないのです」
私たちにできることは必ずある
「地球を守るためにできることはたくさんあります。例えば、講演会を開いたり、ボランティア団体に参加したりすること。また、使い捨てプラスチックの使用を禁止する法律を作るために議員に働きかけることもできます。」
意欲的に活動しているマリネルさんの貴重なお話を伺うことができ、とても有意義な講演会となりました。
講演後、マリネルさんの話に心を動かされた多くの人たちが、フィリピン政府に台風の復興を進めるよう求める署名に参加してくださいました。
最後に
これまで気候変動は、自然環境への影響という文脈で語られてきましたが、生存権、住居権、健康権など、さまざまな人権を脅かし、すでに存在する不平等を加速させる、人権問題でもあります。
マリネルさん、日本で貴重な話を私たちに伝えてくれて、ありがとうございました!
マリネルさんからの感謝のメッセージ
マリネルさんは、日本講演の参加者の情熱にとても感動し、皆さんに感謝のメッセージを送ってくれました。
『みなさまのサポートに心から感謝。講演会にお越しくださった方々も、どうもありがとうございました。みなさまも、私と一緒に一丸となって気候危機と闘ってくださるよう願っています。もう一度、ありがとうと言わせてください!Padayon!(タガログ語で、共に前に進みましょう!)』
報告者:シムカート ビョルン(アムネスティ日本、活動担当職員)
実施日 |
東京講演:2019年10月6日(日) 大阪講演:2019年10月14日(月・祝) |
場所 |
東京講演:明治大学 駿河台キャンパス リバティタワー 大阪講演:大阪市中央公会堂大会議室 |
主催 | アムネスティ・インターナショナル日本 |