2015年は、世界各地でテロや紛争が激しさを増し、シリアに代表されるように、国内避難民、難民がかつてない規模で発生しました。アムネスティは急増するシリア難民の受け入れを求め、世界中でアクションを展開。日本でも、日本でのシリア難民の受け入れを求め署名活動を行いました。
また、昨年に引き続き「Stop Torture"拷問なんて、いらない!」キャンペーンに取り組み、メキシコ、ナイジェリアなどで、不当に拘束されていた拷問被害者が釈放されるなど、一定の成果をもたらしました。その他、危機的状況にある人たちを救うために、誰でも参加できる緊急オンライン署名や手紙書き、イベントなどを実施し、人権侵害の実態を世界中に伝え、改善に取り組みました。
国際キャンペーン(海外の活動)
拷問廃止キャンペーン
2014年に引き続き、国際キャンペーン「Stop Torture 拷問なんて、いらない!」を実施。特にメキシコ、ナイジェリア、フィリピンの問題に取り組んだ。拷問被害者の救済や法整備を求める署名活動をオンライン、オフラインで実施し、計5,000筆が集まった。
「Stop Torture 拷問なんて、いらない!」キャンペーンとは?
ビルマ(ミャンマー)良心の囚人釈放キャンペーン
ビルマで拘束されている学生活動家たちを応援するためのフォトアクション。学生を中心に180人以上が参加した。
11月の総選挙に向けて、すべての良心の囚人の釈放を求めてビルマ政府への要請やオンライン署名を行った。また、外務省の人権人道大使など政府関係者と会合を持ち、表現の自由の弾圧など同国の人権状況についての情報提供や、良心の囚人の釈放に対する日本政府の積極的な働きかけを要請した。
中国人権活動家への弾圧を止める
中国における活動家の弾圧が激しさを増す中、拘束された活動家の身の安全や即時釈放を求めるアクションを実施した。8月には外務省を訪問し、日本政府が懸念を表明するよう要請した。
北朝鮮による「世界に類をみない」人権侵害を終わらせる
中国政府に対し脱北者の強制送還をやめるよう求めるアクションを実施。オンライン署名、フォトアクション、中国大使館前の抗議行動、関連国大使への要請書提出などを行った。また、アムネスティ国際事務局の調査員が来日し、情報収集にあたった。
韓国の良心的兵役拒否者の釈放を求める
韓国で良心や信念から兵役を拒み投獄された若者たち。彼らの釈放と兵役に代わる措置の導入を求める署名をオンラインとオフラインで実施し、2,500筆を超える署名が集まった。
【2015年に展開した主なアクション】
- 日本でシリア難民を受け入れよう!
- 南アフリカ:殺されたLGBTI活動家に徹底した捜査を!
- スーダン:スカートをはいて、むち打ちの刑 !?
- 東南アジア:海をさまよう6,000人。今、助けないと命が危ない!
- チェコ:ロマの子どもたちに未来を!
- 今すぐ奥西勝さんの再審開始を!
- パラグアイ:強かんで妊娠した幼い子の命を救って!
イベント
ライティングマラソン
暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人びとの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2015年も、全国でグループやチームが主催し、手紙書きのイベントなどを開催した。東京事務所では、「12時間ライティングマラソン」を開催。ワークショップや、トークイベントなどを行い、延べ183名にご参加いただいた。
アムネスティ・フィルム・フェスティバル2015
2年に1度開催される「アムネスティ・フィルム・フェスティバル」。2015年は、全8作品を上映し、2日間で述べ700人を超える方が来場し大盛況となった。映画上映にあわせ、会場に展示された世界の人権についての写真パネルや感想掲示版、クイズなどを行い、人権をさまざまな角度から考える機会となった。
ガザ/イスラエル紛争から1年:シンポジウムおよび地域講演を開催
都内でシンポジウム「ガザ紛争から1年~国連はなぜ解決できないのか?」+紛争の犠牲者を悼むキャンドルウォークを他団体と共催し、150人近くが参加した。また、元国連高等弁務官事務所パレスチナ副代表の高橋宗瑠氏を講師に、パレスチナの人権状況を考える講演会を全国各地で開催した。
トークイベント「聞いて、食べて、考える♪人権のこと『家族を取り戻したい』~闘うフィリピンのお母さんたち」
ジャーナリストの工藤律子さんをお招きし、トークイベントを開催。フィリピンでまん延する警察・軍などによる拷問や強制失踪についてお話いただいた。また、会場には、署名や被害者への応援メッセージを書いてもらうコーナーを設け、集まったメッセージは後日、被害者へ郵送した。
全国スピーキングツアー「自分らしい性を生きる~LGBTIの私が命をかける理由~」
LGBTIの人びとへの差別や暴力をなくすために活動する、南アフリカの活動家、ファドツァイ・ミュパルツァさんを招き、全国7か所で一般講演、企業向けセミナー、交流会などを開催。述べ576人の方にご参加いただき、メディアを通して多くの人たちにLGBTIの人たちが直面する人権課題などを伝えた。
国内法制度への取り組み(国内の活動)
取調べの全過程の録音・録画(可視化)の法制化
通常国会において、取り調べの録音・録画制度の導入を含む刑事訴訟法等の一部改正法案が審議された。国会審議前から衆参法務委員に働きかけ、可視化の対象事件の範囲が限定的であるなど法案の問題を指摘。真摯に国会で議論を尽くすよう求めた。法案は2016年の継続審議となった。
表現の自由に関する国連特別報告者の公式訪問延期
表現の自由に関する国連特別報告者の日本公式訪問が日本政府の都合で延期になったことを受け、他団体とともに外務省を訪問し、公式訪問の早期実現を求めた。同日にNGO共同記者会見を行い、アムネスティ日本からも発言した。
表現の自由特別報告者の日本調査の中止に関するNGO共同要請書
死刑廃止
報告書「2014年の死刑判決と死刑執行」の記者説明会を参議院会館で開催し、国際事務局担当者のヤン・ヴェッツェルが「テロリズムと死刑」、袴田秀子さんが「袴田事件から日本の死刑を考える」をテーマに講演を行った。
計3件の死刑執行に対し抗議声明を出すとともに、記者会見および法務省前での抗議行動を行った。また、2014年に釈放された死刑確定者、袴田巌さんの再審開始に向け検察庁へ要請を行っている。松本健次さんの支援では、精神疾患と死刑をテーマに講演会を開催。奥西勝さんは10月に亡くなられたため、再審開始に向けた支援を終了した。
難民
シリア難民を支援する「#OpenToSyria」キャンペーンを世界中で展開。日本では講演会やフォトアクションを実施したほか、第70回国連総会における首相の一般討論演説に向けて、「日本へのシリア難民受け入れについて」の共同要請を行った。また、日本での難民受け入れを求める署名を集め、11月、法務大臣へ5,059筆提出した。
第5次出入国管理基本計画に関するパブリックコメントを日本支部として提出。UNHCRなど他団体と、法改正に向けて情報共有を進めている。