- 2022年7月26日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が本日行った加藤智大さんの死刑執行に強く抗議します。
昨年の年の瀬、12月21日に古川禎久法務大臣の命令により死刑執行が行われたのは、岸田内閣の政権発足後わずか1か月あまりのことでしたが、積極的に死刑執行を続けるという日本政府の方針を例証するかのように、本日、岸田政権で2回目となる死刑執行が行われました。それとほぼ同時に林芳正外務大臣は、昨日行われたミャンマーでの4人の死刑執行に対して、EU上級代表およびオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、英国、米国の外務大臣と共に「人権と法の支配を軽視した暴力行為」だと非難する共同声明を発出しました。ミャンマー軍政による死刑執行を外務大臣が非難するのと同時に、同じ政府の法務大臣が死刑を執行するという矛盾は、外交では国際協調を理念として掲げ、人権を守り抜くと言いながら、内政では人権を蔑ろにする岸田政権の姿勢の表れではないかとの懸念を持たざるを得ません。
古川法務大臣は、歴代の法務大臣と同様に、死刑制度の存廃は我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であり、国民世論に十分に配慮しつつ,社会における正義の実現等の観点から慎重に検討すべき問題であると執行後の記者会見で述べました。しかし、法務大臣が繰り返し強調する「慎重な態度」は制度によって裏付けされたものではありません。国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合に、その法制度を改正すべく努力することは、政府、法務大臣および法務省に課せられた義務です。成立の時点で国際人権基準に合致していた国内法であっても、国際人権基準の進化に合わせた改正を行っていく必要があります。日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査によって、また複数の国連人権機関から、死刑の執行停止と死刑廃止に向けた取り組みを行うよう、繰り返し強く勧告されていることを忘れてはなりません。国連の自由権規約委員会は「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実として死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしてこなかった日本政府の態度を強く批判しています。
死刑執行はすべての政府が遵守すべき国際人権基準を無視したものであり、「人権という普遍的価値を守り抜く覚悟」を発足時に掲げた岸田内閣の基本方針とも矛盾するものです。世界の7割以上の国が法律上あるいは事実上死刑を廃止しているという潮流に背を向け、日本をますます孤立させることになるものといわざるをえません。
加藤智大さんは第二次再審請求中でした。再審請求中の死刑執行は自由権規約第6条に違反するものです。国連自由権規約委員会の勧告に基づき、日本政府は再審あるいは恩赦の申請に執行停止効果を持たせたうえで、死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立すべきです。
人為的に生命を奪う権利は、何人にも与えられておらず、どのような理由によっても正当化することはできません。アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対します。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰です。日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っています。アムネスティは、日本政府に対し、死刑廃止に向けた第一歩を踏み出すために、死刑の執行停止措置の導入を早急に法制化するようあらためて要請します。
2022年7月26日
アムネスティ・インターナショナル日本
<「敬称」について>
死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。
なぜ、アムネスティは死刑に反対するのか?
死刑に関しては、さまざまな意見があります。その中でもとくに多いのが、「被害者の人権はどうなる」「死刑が廃止されては、『被害者や遺族の感情が納得いかない』」という意見です。そして、この問題が、死刑をめぐる一番難しい問題なのだと思います。
死刑をめぐる世界の状況(2022年5月24日更新)
2021年、死刑制度を存置する国は世界的には少数派ですが、死刑執行数と死刑判決数は増加しました。アムネスティの調べでは、世界の死刑執行数は、前年比20%増え(2020年の483+件から2021年は579+件)、死刑判決数は40%増(1,477+件から2,052+件)でした。
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