10月4日、ノンフィクションライターの麻生晴一郎さんをお迎えして、今も香港で続く抗議活動「オキュパイ・セントラル」について、ご報告をいただきました。

麻生さんは、この時、帰国されたばかりで、日本でも大きく報道された警察の催涙スプレー噴射や学生の逮捕があった9月28日も香港にいらっしゃいました。もともと香港の活動家と親交があった、麻生さんが見た香港とはどんなものだったのでしょうか?

麻生晴一郎さんのお話:当局の強硬姿勢に反発したデモ

【広範な層が参加したデモ】

9月にこうしたデモがあることは、予想されていました。というのも、7月にはこうした占拠の予行練習が行われていたからです。ただし、その頃の参加者は民主化など比較的かたい主張がある、ごく一部の人でした。ところが、私が見た限り、9月末のデモには、かなり広範な層が参加していました。

【平和的なデモの背景】

私にとって非常に印象的だったのは、参加者の中に、子連れが多く、カップルがベビーカーを押している風景がよく見られたことでした。少なくとも、大勢の市民も参加し最も大規模だった10月2日までは、非常に平和的なデモでした。ゴミも散らかっておらず、非常に整然としていて、緊迫感がありませんでした。

このように、幅広い層が参加した平和的なデモとなった理由の一つとしては、9月27~28日の警察の強硬姿勢に反発して、「普通選挙」や「民主化」にあまり関心がない層も参加したことがあると思います。香港は実はかなり自由な社会で、何か変革を求めるという意味での「民主化」には必ずしも関心のない層がたくさんいます。
しかし、たとえば6月10日付の中国国務院新聞弁公室の白書には、「一国二制度」は「香港固有のものではなく、全て中央政府から与えられたものである」と、「一国二制度」を否定するかのような記載がありました。

また今回、警察は催涙弾を行使し、ゴム弾入りの銃口を市民に向けるような事態が発生しました。そのような強硬姿勢を目の当たりにしたとき、今の香港が維持できず「中国化」してしまうのではないかと考え、それへの反発から、必ずしも急進的ではない市民層が今回の抗議行動に参加したという面があるのではないかと思います。

【香港と中国のこれから】

今後どうなっていくかは分かりませんが、このままでは終わらないと思います。
中国政府にとって本当に怖いのは、中国本土の市民が立ち上がることです。実は、中国本土では、2年ほど前から市民活動やデモが自由にできなくなっています。以前はまだましだったのです。でも、最近は大変厳しくなっている。
私は中国本土の市民活動家とも交流があるのですが、彼らにとってみると、香港が最後の砦であり、これがつぶされてしまうということへの危機感があります。また、香港が抵抗を示すことで勇気をもらっている面もあります。

このまま、香港が、特別な場所ではなく、中国にいくつかある大都市の一つになってしまうのか。 香港は日本にとっても、身近な場所ですので、決して他人事ではないと思っています。

アムネスティの報告:中国本土で拘束されてる人にも注目を

麻生さんの話の後に、アムネスティ日本の中国チームが、一連の事態についてアムネスティが懸念している点を説明しました。

特に最近の出来事として、反デモ派との衝突の中で、デモ参加者の女性が胸や下半身を触られるなどの被害を受けても警察は何もしなかったことを報告。警察は平和的な行動参加者を守ることもその職務であると、指摘しました。 さらに、香港の行動に連帯の意思表示をSNSなどでしただけで拘束された人が、中国本土ではたくさんいることを紹介。このような人のことにもぜひ注目し続けてほしいと訴えました。

この報告を書いている今も、「オキュパイ・セントラル」は続き、警官や占拠反対派との衝突も伝えられています。 また、中国本土では、こうした香港の活動を支援しようとした活動家が次々と逮捕・拘束されています。

アムネスティは今後も、抗議活動の排除や活動家の逮捕・拘束に対し、要請を行ってきます。署名や寄付のご協力をよろしくお願いいたします。

■ 関連アクション ■

▽香港:平和的な抗議行動参加者を守れ!
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/hongkong_201410.html

▽中国:香港の抗議を支援する活動家らを拘束
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/ua/ua/2014ua255.html

※この報告会の模様は、11月1日まで、インターネットでもご覧いただけます。
http://www.ustream.tv/recorded/53547098 (USTREAM)

開催日 2014年10月4日(土)
開催場所 アムネスティ日本 東京事務所
主催 アムネスティ・インターナショナル日本 中国チーム

ヒューマンライツ・サポーターになりませんか?