イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:投資会社 パレスチナ人に対する監視技術の使用を停止する人権保護を要求

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2024年7月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:

アムネスティ・インターナショナルは、被占領東エルサレムに設置されている監視カメラを製造するTKHグループ(オランダ)に対して、同社の主要投資家である投資会社ASNインパクト・インベスターズが人権保護措置を適用するよう求めたことを歓迎する。

投資会社ASNは、TKHグループが1年以内に人権デューディリジェンス方針を導入しなければ、投資を打ち切ると述べた。この要求は、投資家が投資先の行動に対して責任を求める正しい先例となる。

イスラエルは、ヨルダン川西岸のいたる所に顔認識カメラを設置し、パレスチナ人への人権侵害とアパルトヘイト体制の強化を進めてきた。アムネスティは1年前に、その実態を詳述した報告書『アパルトヘイトの自動化』を発表している。

投資家は、TKHグループ傘下のTKHセキュリティのような企業が監視技術を開発・販売するための条件や資金を提供しているが、それが人権を侵害する可能性が高い場合、特に慎重に注視することが重要である。

昨年10月7日以降、イスラエルは監視によってヨルダン川西岸のパレスチナ人の移動の自由や結社・集会の自由を制限し、弾圧を強化してきた。イスラエルによるパレスチナ人への人権侵害を助長するハードウェアやソフトウェアの提供は、いかなる状況でも容認してはならない。

昨年のアムネスティの報告書での指摘に対し、投資会社ASNは次の回答を送ってきた。

「今後、同様の問題を回避するための適切なデューディリジェンス方針の策定に向け、当社はTKHグループに積極的に関与する方針を決めた。TKHグループが1年以内に当社の要求を果たさなければ、投資を打ち切る。これは当社が取り得る最も強力な手立てだ」。この方針は、ASNの2023年度年次報告書と2023年度下半期の投資報告書にも記されていた。

アムネスティは『アパルトヘイトの自動化』の中で、東エルサレムでTKH製の監視カメラが使用され、一部はネットワーク化された顔認識システム「マバト2000」の可能性があると指摘した。同システムは2000年に導入され、その後顔認識機能が組み込まれたことで、イスラエル当局は、パレスチナ人一人ひとりの日常生活の監視が可能になり、移動の自由や表現・結社・平和的集会の自由に対する恣意的な制限が容易になった。

アムネスティの調べでは、エルサレムの旧市街とシェイク・ジャラ地区で5メートルごとに1台または2台の監視カメラが設置されている。監視カメラを至る所に設置してパレスチナ人に恐怖心や不安感を抱かせることで、イスラエルのアパルトヘイト体制の一層の強化につながっている。

特に東エルサレムでは、戦略的地域からパレスチナ人を排除しようという試みと並行して顔認識カメラの設置が増え、街頭で活動するパレスチナ人への圧力になっている。

顔認識技術は、イスラエル当局が被占領パレスチナ地域に住むパレスチナ人を監視し、イスラエル当局と不法入植者にとって戦略的に重要な地域からパレスチナ人を排除する目的で利用されている。これらの大規模で差別的な監視体制は、プライバシー、平等、非差別、移動の自由の権利を侵害している。

2021年4月、アムネスティは、東エルサレムでイスラエル警察の管轄下の道路や建物などにTKH製の監視カメラが設置されていることを確認した。

アムネスティはTKHに対し、イスラエルの治安当局が使用するTKHセキュリティの製品の性質(間接的な取引関係含め)、人権デューディリジェンスの手順、顔認識製品の開発・販売を停止すると公約する予定があるか、あるいはすでに行っているか、などについて質問したが、これまでのところ同社からの回答はない。

TKHが人権デューディリジェンスの強化に向けた明確な姿勢を示さず、何の確約もしない状況が続いていることから、今回のASNの決断は、企業の責任ある行動を確保する上で極めて重要な意義を持つ。

事業に投資する投資家には、AI(人工知能)が潜在的あるいは現実に人権に与える影響について検証し、それに対応するための積極的で継続的な措置を講じる責任がある。この責任には、人権デューディリジェンス(人権への負の影響を特定し、予防・軽減を図り、対処について説明する一連の取り組み)の強化が求められる。投資家や監視サービスを提供する企業は、顔認識製品の開発・販売に関与すべきではなく、イスラエル当局への輸出を直ちに中止すべきだ。 

アムネスティは、監視目的の顔認識製品の開発・販売・輸出・使用の世界的禁止を求めている。 

背景情報

アムネスティは2023年5月、報告書『アパルトヘイトの自動化』を発表した。報告書は、イスラエルがレッドウルフやマバト2000などの監視ネットワークを使ってパレスチナ人を追跡し、パレスチナ人の移動の自由に対する厳しい制限を自動化し、パレスチナ人のアパルトヘイト体制の維持に役立てていることを浮き彫りにした。

2023年10月7日、ハマスその他のパレスチナ武装組織がイスラエル南部への攻撃を開始し、子ども36人を含む少なくとも1,140人の犠牲者を出し、245人の人質を取った。これに対するイスラエルの攻撃で、ガザでは少なくとも3万7000人が死亡し、市街は破壊され尽くし、大量の市民が移動を強いられた。一方、被占領ヨルダン川西岸地区では、イスラエルが支援する入植者による暴力、約20のパレスチナ人コミュニティが立ち退きを余儀なくされた。

アムネスティ国際ニュース
2024年7月4日

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