- 2023年12月14日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ウクライナ
- トピック:子どもの権利
ロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアの占拠下で暮らす人たちが我が子にウクライナの教育を受けさせようとして、残虐な報復を受けかねない状況に置かれている。
ロシアで養子にするための「再教育施設」に子どもが送られたり、ロシアのカリキュラムに従った学校に入学させられたりするため、親の中には、我が子を隠す人もいる。
アムネスティは、ロシア占拠下で暮らしていたか、今も暮らす学齢の子どもを持つ16家庭と教育関係者23人から証言を得て、ロシアによるウクライナ侵略戦争で、ウクライナの教育が大規模で広範な中断を余儀なくされていることが明らかになった。
ロシア占拠下では、脅しと強制が、家族、子ども、教職員にとって日常化している。ロシアによる恐怖心を植え付ける施策が続く中、ウクライナで安全な人などいない。報復を恐れ、身を隠して授業を受けている子どももいる。
その勢力を最も拡大した際は、ロシア軍がウクライナ領のおよそ4分の1を占拠し、ウクライナの攻勢による一部の失地回復後も、およそ5分の1を占拠している。
占領が始まってから数カ月後、報復のリスクがあるにもかかわらず、教師や親の中にはウクライナのカリキュラムに沿った教育をしようとする人たちがいた。地区の教育担当官の言葉を借りれば、教師も生徒も親もパルチザンになり、庭に穴を掘ってノートパソコンや携帯電話を隠したり、携帯電話の電波を捉えようと屋根裏部屋や古い物置小屋に隠れたりしている。
学校の図書館員はアムネスティに、「ロシア兵が村をパトロールし、しばしば思いついたように捜索をしている中で、密かに生徒たちと会って本を与えた」と話した。
子どもたちの安全のため、教育を断念した親もいた。2人の子どもを持つ母親は、「子どもたちがロシアに連れていかれることを恐れ、ロシアに占拠されていた9カ月間、戸外に出たのはわずか数回だった」と話した。
恐怖と脅迫が続く中での生活
へルソンの占領下の村に住んでいた母親ケニヤさんは、2022年春、自宅を訪れた教師に「9月に学校が再開したら息子は来るか」と尋ねられ、行かないと答えた。その後、ロシアの軍服を着た男たちに、「学校に来なければ孤児院に連れて行く」と脅され、結局、息子を通わせざるを得なくなった。学校はロシアの国章で飾られ、武装職員が配置されていた。
ザポリージャ州でロシア占拠下にあるベルディアンスクでは、子どもたちはロシア国歌を覚えて歌うことを強要されているという。拒否すると「親から離され、ロシアの孤児院に送られて再教育を受けるぞ」と脅される。この学校では、ある学生が「従わなければ、報復を受ける」などと脅され、ウクライナについての情報を提供するよう要求された。
同じ学校で配布された通達には、こう書かれていた。「周りを見なさい。ウクライナがハルキウやマリウポリなどの街を破壊したことがわかる。ウクライナに殺されたくなければ、見たり聞いたりしたことを何でも私たちに言うのだ」と。
教師の教化と強制が教育に影響
2022年3月から9月までロシアに占領されていたハルキウの教師ハンナさんは、9月の学校の再開後はロシアのカリキュラムに沿って教えるよう、校長から圧力をかけられたが、抵抗した。
ハンナさんはロシアの人道支援を受けるための登録を諦めて、自宅に身を潜めた。アムネスティに「ロシア占拠下での8カ月間、収入も援助もなく耐え凌いだ」と話した。
ロシア占領地域に住む家族によれば、再開された学校には資格のある教職員が不在で、子どもたちは自主的に教科書を読むことしかできず、その結果、学習の質と規律が損なわれているという。
ウクライナを癒し、ウクライナの子どもたちの現在と未来の苦難を少しでも軽減する唯一の方法は、ロシアが国際法上の侵略行為であるウクライナでの戦争をやめることだ。それまでは、占領当局は、地元民への脅しや教職員への不適切な教育活動の強要をただちにやめるべきだ。戦時中あるいは占領では、全当事者は国際人道法と国際人権法を忠実に守らなければならない。質の高い教育を受ける子どもの権利の保障は極めて重要であり、十分に尊重される必要がある。
アムネスティ国際ニュース
2023年12月11日
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