- 2023年3月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ウクライナ
- トピック:
ロシアによるウクライナ侵攻から1年、ウクライナ市民が受けた被害と苦悩に対する正義を求める声に対し、国際社会は骨太の対応計画を立てる必要がある。
昨年2月24日、ロシア軍はウクライナへの全面侵攻を開始した。アムネスティはこの動きを「侵略行為であり人権の大惨事」と批判した。侵攻以来、ロシア軍は戦争犯罪などの国際人道法違反を繰り返してきた。超法規的処刑、民間インフラや避難場所への攻撃、民間人の強制退去や強制移動、市街地への攻撃による大規模な殺害などを行ってきた。
ロシアの侵略が続く中、同国が行った犯罪の全容は見えないままだが、紛争の犠牲者・被害者の正義と権利への要求は、優先されなければならない。国際社会には、国際法を犯した者は責任と正義の追求から逃れることはできないことを知らしめる義務がある。
ロシア軍がウクライナで攻勢を強めているように見えるだけに、人権侵害と戦争犯罪の加害者に責任をとらせることが、これまでになく急務と言える。
侵攻以来アムネスティは、民間施設を狙った攻撃や戦禍の市民への支援の阻止などの戦争犯罪を明らかにしてきた。ロシアの支配地域で暮らす多くのウクライナ市民は、人道支援や医療を必要とするにもかかわらず、ウクライナ政府下の地域への移動が認められない事態が続いている。
ウクライナ市民はこの1年、ロシアの侵攻で想像を絶する恐怖を味わってきた。ウラジミール・プーチンとその軍隊は血で染まっている。被害者は、侵攻で市民が耐え忍んできた災禍のすべてに対して、正義と賠償を求める権利がある。国際社会には、これらの正義が果たされるまで見届けるという強い姿勢が求められている。侵攻から1年、国際社会がすべきことは山積している。
性犯罪やジェンダーに基づく犯罪など戦争犯罪の事例は数万件に達するが、紛争が続く中、今も発生している被害を加えれば、その件数ははるかに多くなるだろう。
被害者に対する正義と賠償
この紛争で、数え切れないほどの市民が巻き添えになってきた。追撃砲は人びとの体を引き裂くだけでない。街のインフラが破壊され瓦礫と化す中、多くの市民は生活手段を奪われ、生きるすべを失っている。
紛争の最中、多数の国内外の調査員が国際法違反の罪に対して迅速な調査するなどの対応は心強かった。だが、ウクライナの人びとへの全面的な正義は、彼らが納得する正義と賠償を手にすることで初めて実現する。その実現は、国際社会が既存の司法機関に強力な支援を継続的に提供して初めて可能になる。
また、幅広い問題に対応できる正義のための新たな仕組みを検討する必要もある。国連人権理事会が昨年3月、独立調査委員会の設置を決定したこともその一例だ。最終的には、これらの対応が司法の面で膨大な数の戦争犯罪や武力侵略の罪への対応の強化につながるだろう。
ロシアの侵攻を問う強固な仕組み作りと同時に、国際法違反の犯罪に加担した個人を裁判にかけ、その違法行為の責任を追求しなければならない。戦争犯罪や国際法違反の侵略の罪で責任を問われるべき人物には、ロシア軍の上級司令官や文民指導者が含まれる。
これらの犯罪の立件は容易ではないが、犯罪に直接関わった兵士だけでなく指揮系統の上位者も捜査対象に加えることは極めて重要で欠かせない。裁判がどこで行われるにせよ、国際人権基準と公正な裁判基準が順守され、戦禍を被った人びとが参加し、その要求に耳を傾ける裁判でなければならない。
世界中で紛争が起こり、民間人が計り知れない被害を受けているとき、公正な裁判への紛争被害者の参加は、紛争地を問わず欠かせない。国際刑事裁判所を含めた国際社会の初期対応は前例がなかったことだが、これは国を問わず正義を追求する上での最低基準となるべきだ。
継続的関与と連帯のみが前進への道
これまでアムネスティやその他の市民団体は、より大きな成果をあげるためには国や機関、団体が協調的行動を取る必要があることを繰り返し主張してきた。この主張は、今回のウクライナでもあてはまる。
国を超えて正義を果たす上で、機関や当局は、それぞれが持つ見識の共有、戦略の調整、専門知識や技能の差への対処などにおいて協力する必要がある。
国際社会には、公正で公平で的確な捜査や調査に向けた支援が求められており、一方でウクライナに対して、ローマ規程の批准、国内法の国際法基準との整合、国際刑事裁判所との協力体制の強化を促すべきだ。さらにウクライナのための正義を果たす上で、普遍的管轄権に基づく法令を持つ国がウクライナの人びとの正義に貢献できる方法を探ることも極めて重要だ。
求められる人道支援
国際社会が支援をする際、女性、高齢者、障がい者、子どもなどの弱者が、それぞれどんな支援を必要としているかを特定する必要がある。また、子どもを含むウクライナ人多数が、ロシアが占領する地域やロシア国内に移動させられていることも考慮しなければならない。このような人びとへの優先的対応とその要請に合わせた支援が欠かせない。
ウクライナの市民団体との協力では、経済支援や人道支援のそれぞれに優先順位をつけることも必要だろう。また共同作業では、人道支援、復興、司法、賠償に絞った手続き全般で、その透明性や有効性の確保や被害者への配慮が求められる。
ロシアのウクライナ侵攻での被害者・犠牲者のための正義と賠償を確保するには、この1年の間にウクライナ市民に加えられた膨大な物理的、経済的、心理的被害を認識することがとりわけ重要だろう。
責任追求
2014年、ロシアがウクライナに侵攻しクリミアを併合して以来、アムネスティはロシアの責任追求を要請するとともに、戦争犯罪など国際人道法違反を記録してきた。
アムネスティ国際ニュース
2023年2月22日
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