ウクライナ:ロシアの侵攻で特に窮地にある高齢者

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2022年12月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
トピック:

ウクライナの高齢者は、ロシアによる侵攻でとりわけ深刻な影響を受け、居住地から避難しても、他の人たちのように住宅を確保することができない状況が続いている。

アムネスティの調査によると、高齢者はしばしば、避難できずに紛争地域に留まり、損壊した自宅での生活を強いられている。

避難したとしても、移り住んだ住宅の家賃を払えないことが多く、その結果、職員不足のため十分な世話を受けられない国の施設での暮らしを余儀なくされている。

ロシアの侵攻で、高齢者が身の危険にさらされ、数百万人が住処を失った。ウクライナの高齢者の権利を保護する最も有効な手立ては、ロシアが違法な戦争を終わらせることに尽きる。

ウクライナ政府は、7月にはドネツクのおよそ20万人の退避を発表するなど、紛争の影響を受ける地域住民の避難に懸命に取り組んできた。一方、高齢者の住居を確保する上で必要な費用や移動の問題は、ウクライナ政府だけでは解決できない。アムネスティは、他の国々に対し、高齢者、とりわけ障がいを持つ高齢者の国外避難を支援し避難先で宿泊施設を提供するよう呼びかけている。

国際機関は、高齢者が住まいを賃貸する上で必要な経済的支援を拡大し、ウクライナ政府とともに、新たに建てられた宿泊施設に高齢者が優先的に入れるようにすべきだ。

高齢者に過度なリスク

ウクライナの60歳以上の人口は全人口の4分の1近くを占める。紛争の中で、高齢者はとりわけ弱い立場に置かれる。国連人権高等弁務官事務所によると、今年2月から9月までに紛争で亡くなった市民の34%を60歳以上が占める。

健康に問題を抱えることが多い高齢者は、被占領地域では一層危うい状況に置かれている。ロシア軍が、国際法違反の人道支援を制限しているからだ。

避難生活と収容者の増加

家を失った多くの高齢者は、住まいの確保に四苦八苦している。賃料は上昇し、年金が最低限の生活に必要な金額を下回るからだ。特に障がいを持つ高齢者には、民間の一時的住居への入居は難しい。また施設側の職員不足もあり、障がいを持つ高齢者は多くの場合、国の施設に入らざるをえない。

ウクライナ社会政策省が発表した数字では、2月から7月までの4カ月間で少なくとも4千人の高齢者が紛争で家を失い、国の施設に入所した。

ドニプロにある高齢者障がい者向け一時的住居の責任者は、「施設に送られるのは、全体のおよそ60%。家賃や公共料金、食費すら払えない人たちだ。そういう人たちは、介護施設に送らざるを得ない」と話す。

アムネスティは、高齢者や障がい者向けの複数の国の施設を訪ねたが、これらの施設では、特に移動が難しい高齢者が必要とする対応ができていなかった。独立監視団によると、このような事態は以前から日常的に発生していたことであり、ロシアの侵攻の影響で職員不足が深刻になった。

ハルキウの施設の入居者たちは、「あの人達は、朝と夕方に一回、おむつを替えるだけ。私たちは見捨てられている」、「介護施設では基本的にリハビリはしない」などと話す。

紛争が続く中、民間のインフラとサービスは、厳しい状況に置かれている。とはいえ、ウクライナ政府は、監視団による国の施設の視察を受け入れること、そこに住む高齢者が、代替住宅が利用可能になり次第、優先的に入居できるよう、できる限りのことするべきだ。

危険な住居

高齢者の中には自宅に留まると決めた人たちもいる。「避難情報が届かなかったから、避難できなかった」とアムネスティに話す人が何人かいた。

電気やガス、水道がない中で暮らす高齢者もいる。紛争で窓や屋根が壊れ、風雨や雪をしのげなくなった人もいる。

チェルニヒウの女性(76歳)は、唯一屋根が残る浴室でボランティアが用意したマットレスを敷いて寝ていた。その女性はこう話す。「この通りの人たちはみんな出て行った。残ったのは私を入れて高齢女性3人。1人は障がい者。私も足がいうことをきかない。3月に何度も砲撃があったとき、外に出ると炎が上がっていた。自宅が燃えていた」

アムネスティは各国と国際団体に、高齢者への国外避難の支援と資金援助の提供を呼びかけている。また、高齢の障がい者向け住居の建設に向けた支援も必要だ。

凍てつく冬が到来した今、高齢者の避難所への入所と高齢者が住む家屋の修理が特に急がれる。

背景情報

アムネスティは、今回の調査(今年3月から10月まで)にあたりウクライナの7つの国家機関の担当者を含む226人に聞き取りをした。

アムネスティは、ロシアのウクライナ侵略戦争で行われた戦争犯罪を含む国際人道法違反を記録してきた。また、ウクライナへの侵略と国際法違反をめぐるロシア軍幹部や当局者の責任追及を要請してきた。

アムネスティは、ウクライナで現在進行中の国際刑事裁判所の調査を歓迎する。包括的な責任を問うには、国連とその関係機関の取り組みは欠かせず、普遍的管轄権の原則に基づく国家レベルでの取り組みも必要だ。

アムネスティ国際ニュース
2022年12月6日

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