- 2022年8月17日
- [ブログ]
- 国・地域:日本
- トピック:性的指向と性自認
記者会見を行ったアムネスティ日本のユース・ネットワークのメンバー © Amnesty International Japan
2021年の通常国会では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人たちが直面する困難な状況に取り組む法案が提出される予定でした。ところが、与野党で合意にこぎつけたはずの同法案の提出が与党自民党内で了承されず、結局、立ち消えとなりました。LGBTの人たちに対する法的保護を実現するには、今後、どうしていけばいいのか。アムネスティ日本では、市民、特にユースの声を可視化し、政治に届けるために、意識調査を行いました。
2021年春、自民党の「理解増進法案」と野党の「差別解消法案」の一本化に向け、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」で協議が行われていました。そして自民党案に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるという認識の下」という文言を加えることで合意されました。「差別的取り扱いの禁止」は盛り込まれず、差別撲滅にははなはだ不十分な法案ではありましたが、法律が何もないよりは、と野党が譲歩し、「差別は許されない」という文言を入れることで折り合いがつけられたかたちでした。
しかし、追加されたこの文言をめぐって自民党内の法案審議が紛糾し、国会提出が見送られたのです。自民党は昨年10月の衆議院選挙でLGBTに関する議員立法の実現を公約に掲げましたが、先の参議院選挙ではそれもありませんでした。
アムネスティ・インターナショナルでは、日本で暮らすLGBTの人権状況の改善を目指して取り組んでおり、その一環として、性的指向、性自認を理由とした差別を禁止するよう、日本政府に法整備を求めてきました。理解を進めようという法案すら認めない政治の壁を打破するにはどうすればいいのか---アムネスティ日本のユース・ネットワークが考えたのが、「差別禁止を求めるユースの声を政治に届ける」です。その第1弾として、6月にZ世代を対象に差別禁止の法制化に関する意識調査を実施(調査自体は外部に委託)、政治に届きにくいユースの声をメディアを通じて広く伝えてもらおうと、記者会見を開催しました。
意識調査は、Z世代の約8割が差別禁止法の制定に賛成しているという結果になりました。調査結果の概要は、下記をご覧ください。調査では、賛成と答えた人たちに、政治に声を届けるのは選挙だ、との観点から、LGBTに関する各政党の考え方が投票行動に影響するかどうかも聞きました。
意識啓発は大切ですが、現実に差別で不利益を被り、それによって命さえ落としている人がいる状況に対処するのが、国の役目です。「差別はいけない」と唱えるだけでなく、差別や人権侵害を防止し、起きた場合に認定、救済する具体的な仕組みが必要です。理解の促進と差別禁止は両輪なのです。
アムネスティは差別を禁止する法整備の実現に向け、粘り強く取り組んでいきます。
※1 LGBT差別解消法案:性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案
※2 LGBT理解増進法案:性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律案
LGBTに対するいじめや差別を禁止する法律制定に関するZ世代の意識調査
アンケートでは、LGBTに対するいじめや差別を禁止する法律制定に対し賛成派、反対派の代表的な意見を提示し、それを読んでいただいた上で賛成か反対か、そう答えた理由も含めて回答していただきました。
✔︎ 約8割がLGBT差別禁止法制定に賛成
✔︎ 反対は3.7%
「賛成」または「やや賛成」と回答した理由 TOP5
「反対」「やや反対」の主な理由
- 国民の理解が進んでいないので、まずは理解の促進に取り組むべき
- 法律の効果や必要性に疑問
- いじめはLGBTに限ったことではないので、限定すべきではない
- 少数の人権よりも多数の生きやすさや考え方を尊重すべき
「どちらとも言えない」と答えた人の理由の約4割が、「よくわからないから」「特に理由はない」でした。
Z世代の投票行動への影響
LGBTへのいじめや差別を禁止する法律の制定について、 「賛成」または「やや賛成」と回答したZ世代2,000人のうち 、58.6%はLGBTに対する各党の考え方が投票行動に影響すると回答しました。
<調査概要>
- オンラインアンケート
- 対象者:日本全国に住む18~25歳のZ世代
- 有効回答数:4,668人(平均年齢21.4歳)
アムネスティ・インターナショナル日本
2022年8月17日
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