ウクライナ:キーウ州での戦争犯罪 ロシア軍に法の裁きを

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2022年5月30日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
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Amnesty International
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アムネスティによるキーウ北西部での聞き取り調査と物的証拠の検証から、ロシア軍による一連の攻撃は戦争犯罪にあたることが明らかであり、関与した者は全員、法の裁きを受けなければならない。

アムネスティの調査団は、北西部のボロジャンカ、ブチャ、アンドリイフカ、ブリジフカ、ボルゼルなどに入り、ロシア兵による親族や隣人の殺害を目撃するなどした45人と、住宅を狙った空爆の様子を見聞きした39人に聞き取りをした。また、ウクライナの高官とも会談した。調査は12日間に及んだ。

ボロジャンカでは過剰で無差別な攻撃により、少なくとも民間人40人が死亡し、街全体が廃墟と化し、数千人が家を失った。ブチャをはじめとする町や村では、22人が犠牲になった。そのほとんどが超法規的処刑だった。これらの町や村に侵攻したロシア軍兵士が行った民間人への攻撃や殺害は違法であり、戦争犯罪にあたる。

アムネスティは、攻撃で最愛の家族を失い、あるいはロシア軍の侵攻で日常生活が暗転した人たちに会い、ロシア軍の戦争犯罪を裁いてほしいという訴えを聞いた。この人たちの要求はもっともであり、アムネスティは、ウクライナ当局や国際刑事裁判所などの関係機関に対し、戦争犯罪として訴追する上で必要な証拠の保全を強く求める。民間人の殺害に関与した指揮系統を含む責任者全員を裁くことが極めて重要だ。

ボロジャンカの住宅街に空爆

3月1日と2日、ロシアは、キーウの北西約60キロにあるボロジャンカで600世帯以上が住む8棟の集合住宅を空爆し、少なくとも40人が亡くなった。犠牲者の多くは、建物の地下室に避難していた人たちだった。

3月1日、住宅街への空爆が繰り返される中、1棟のアパートが砲撃を受け、外科医(39歳)と妻、娘の家族を含む少なくとも7人が死亡した。

外科医の息子を失った母親は、アムネスティにこう話した。「通りには戦車がいて、みな、外に出ることを怖がってた。息子にはアパートを出たほうがいいと言ったけど、息子は危ないからと地下室に避難して……。アパートは爆撃されて建物の真ん中部分が崩れ落ちた」

3月2日、別のアパートへの攻撃では、少なくとも23人が死亡した。親族5人を失った男性は、「私と息子はアパートから逃げましたが、母と兄夫婦、義姉の両親は、通りに出たらロシア兵に撃たれるから地下室の方が安全だと言い張って、残った。私たちが外に出た20分後にアパートが爆撃された」と語る。

別の男性は、自宅から150mほど離れたガレージにいたとき、自宅があるアパートが爆撃を受けた。アパートは真ん中部分で引き裂かれるように破壊され、地下にいた妻や隣人が犠牲になった。

攻撃を受けたいずれの集合住宅も、その周辺に軍事的攻撃目標はなかったとされている。ウクライナ軍を支援する人たちが、近くを通過するロシア軍の車両に向けて発砲することはあった模様だ。民間人への直接攻撃や不釣り合いなほどに激しい攻撃を故意に行うことは戦争犯罪を構成する。

アムネスティは、ボロジャンカでの空爆による被害を360度の角度からみることができる映像を公開している。

キーウ北西部での殺戮

2月下旬、キーウの北西約30キロにあるブチャの町がロシア軍に制圧された。3月4日から19日にかけて、集合住宅で5人が殺害された。明らかに超法規的処刑だった。

営業職の男性(43歳)は、自宅で射殺された。男性は、ロシア軍兵士があたりを1件1軒調べていたときに隣人を助けに行っていた。遺体は翌日、隣人に発見された。地下室に避難していて難を逃れた男性の妻によると、夫は、背中と肺と肝臓のあたりを撃たれという。

アムネスティの調査員は殺害現場で弾丸2つとカートリッジケース3つを発見した。アムネスティの兵器専門家は、弾丸はロシアの一部の精鋭部隊(当時、ブチャに展開していた部隊含む)が使用する特殊ライフルでのみ発射可能なものであることを割り出した。

また、ブチャで回収されたロシア軍の書類には、ロシア空挺部隊の運転手兼整備士の徴兵と訓練内容が記載されていた。空挺部隊の中には、徹甲弾(装甲やコンクリート壁を破壊する弾丸)を発射する特殊な小銃を装備する部隊もある。

3月下旬、前述の営業職の男性と同じアパートに住んでいた建設作業員(44歳)は、アパートの階段を上っているところをロシア兵に撃たれ、さらに手榴弾を投げつけられた。血だまりの中で横たわっているところを救助され、一命を取りとめた。

アムネスティはそのアパートを訪れ、階段に残った大きな血痕や壁の焼け跡などから手榴弾が使用されたことを確認した。

アムネスティは、他の町や村でも違法な処刑があったことを確認した。ロシア軍兵士は、拘束した住民を後ろ手に縛り、拷問を加えた上で頭部を撃つこともあったという。

車で移動中に前後の車とともにロシア軍兵士の銃撃を受けた男性は、妻(32歳)と父親(62歳)を亡くした。九死に一生を得た男性は、アムネスティにこう話した。「町から避難する人たちの車の列が銃撃された。ほとんどの車には子どもが乗っていた。私の車も撃たれた。父は頭に銃弾を受けて即死し、妻や息子も負傷した」。

また、アムネスティは、遺体の扱いを非難する声も聞いた。アムネスティが4月にブチャやボロジャンカなどに入っときには、すでに遺体は崩壊した建物の瓦礫から移されたか一時的な埋葬から掘り起こされていたが、多くの家族は、扱いがずさんで、正確な情報が得られないと嘆いた。遺体が別人のものだったという遺族もいた。

戦争犯罪に対する裁きの追求

国家間の武力紛争で行われた超法規的処刑は、戦争犯罪である故意の殺害にあたる。犯意を持って実行された無差別攻撃や過度な攻撃も同様だ。

戦争犯罪の責任者は全員、刑事責任を問われなければならない。指揮責任の原則では、指揮官と文民指導者(閣僚や国家元首)など指揮系統の上位者は、自軍による戦争犯罪を知る立場にありながら、それを止めようとせず、あるいは責任者を処罰しようとしなかった場合にも刑事責任が問われる。

司法手続きは、可能な限り包括的であるべきで、ウクライナにおける戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、侵略の罪を犯したすべての加害者を公正な裁判にかける必要がある。さらに、国際的な犯罪の捜査と訴追において被害者の権利は最も尊重されるべきであり、すべての関係当局に被害者中心の対応が求められる。

アムネスティ国際ニュース
2022年5月6日

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