ウクライナ:幼稚園にクラスター弾 避難中の子どもら市民3人が死亡

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2022年3月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
トピック:

2月25日朝、ウクライナ北東部スームィ州アフトゥイルカのソネチコ保育・幼稚園が、近郊で展開するロシア軍によるものとみられるクラスター弾攻撃を受け、戦闘から避難していた子ども1人を含む3人が死亡し、1人が負傷したことが、アムネスティの調べでわかった。

アムネスティは、保育・幼稚園に落とされたクラスター子爆弾が220mmウラガンロケットから放出されたことを確認した。この攻撃は戦争犯罪を構成する可能性がある。

クラスター弾の使用は、多くの国で禁止されているが、ロシア軍は、これまでも人口密集地でクラスター弾を使用したことがあった。

学校は言うにおよばず、人口密集地でのクラスター弾の投下を正当化することはできない。無差別的で国際的に禁止されているこの兵器の使用は、民間人の生命を著しく軽視するロシアの姿勢を示している。

クラスター弾は容器(親爆弾)に詰めた多数の子爆弾が広範囲に飛び散る兵器で、不発率が最大20パーセントと極めて高く、市民への脅威は計り知れない。本質的に無差別兵器である。ウクライナとロシアなどを除く100カ国以上が加盟する「クラスター弾に関する条約」は、クラスター弾の使用・開発・生産・取得・備蓄・移転を無条件に禁止している。

慣習国際人道法でも、クラスター弾のような無差別に殺傷する兵器の使用を禁止している。無差別に民間人を殺傷する攻撃は、戦争犯罪に等しい。

クラスター弾にさらされた地域を撮影したドローン映像によると、クラスター弾の子爆弾は建物とその周辺、少なくとも7カ所に着弾した。映像では、血だまりの中で横たわる人たちが確認できた。

アムネスティが現地情報源から得た多数の写真とビデオには、攻撃された場所の状況や犠牲者とその家族の様子、校舎の損傷状況などが収まっていた。子爆弾にさらされた校舎とその周辺7箇所の地面には、特徴的な剥落など、クラスター弾によるとみられる損傷が確認できた。

調査報道機関ベリングキャットによると、ロケット弾の残骸が、着弾地点から東200mの地点で見つかっている。ロケット弾の飛行軌跡から推定されるロケット発射地点には、ロシア軍がすでにいたことがわかる。

被弾した校舎から北300メートル離れた物流倉庫が、攻撃目標だった可能性がある。しかし、今回使われたウラガンロケットのような複数のロケット弾を一斉に発射する兵器は、無誘導で不正確なため、民間人居住地域では決して使ってはならないものとされている。

学校への攻撃

無差別攻撃の禁止に違反する今回の攻撃は、法的に特別な保護を受けるべき施設である校舎を損壊させた。

今回の紛争で校舎が攻撃を受けた事例は、アムネスティが確認しただけでも4回もある。

親ロシア派の実効支配線上で砲撃が激しくなる中、2月17日、ロシアの支援を受けた勢力がルハンスク州のスタニツィア・ルハンスカの幼稚園を攻撃し、市民3人が負傷した。2月25日夜には、ドネツク州マリウポリにある学校の校舎が、ミサイルの直撃を受け、窓は吹き飛ばされ、金属片が壁に突き刺さった。2月26日には、北部チェルニーヒウの幼稚園が砲弾を受け、火災が発生した。

この火災の熱は、気象衛星センサーで感知された模様だ。その赤外線画像で、2月26日に撮影された画像から火災だと確認できる。別の衛星に搭載された環境センサーも、2月26日にチェルニーヒウの着弾を2度感知していた。

国際人道法では、教育施設は、軍事目的に使用されない限り、紛争の暴力から保護を受ける権利がある。アムネスティの調べでは、いずれの校舎も軍事目的に使用されていないと考えられる。紛争当事者は、校舎を紛争に巻き込まないため特段の配慮を求められるが、攻撃件数が増加していることを考えると、ロシア軍はこの要件を満たしているようにはみえない。

2019年、ウクライナは、武装紛争下で学校や大学を軍事目的使用から保護し、軍事利用を制限する国際的な指針「学校保護宣言」に調印した。現紛争の全当事者は、この宣言を尊重しなければならない。

安心と安全が求められる保育園や幼稚園への無差別な攻撃は、断じて許すことはできない。この事態は、戦争犯罪として捜査されるべきだ。戦争犯罪を行った者は、国際刑事裁判所(ICC)あるいは他の国際刑事司法手続きに基づき、個人としてその責任を問われなければならない。

国連加盟国と国際刑事裁判所は、ウクライナでの国際法上の犯罪行為を示す証拠の収集・保全をどう進めていくか、その検討が急がれる。

ロシアとウクライナは国際刑事裁判所の締約国ではないが、ウクライナは、2015年に自国内で起きた犯罪について国際刑事裁判所の管轄権を受け入れている。

アムネスティ国際ニュース
2022年2月27日

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