- 2012年8月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:武器貿易条約
中国、ロシア、米国は無責任な武器取引に歯止めをかけるはずの重要な合意を先送りにした。
シリア市民が武器による攻撃にさらされていることが連日大きく報じられている中、中国、ロシア、米国は7月27日、無責任な武器取引に歯止めをかけるはずの重要な合意を先送りにした。
武力紛争で毎分1人が亡くなっているとき、この条約の取りまとめは大国の責務である。しかし、オバマ大統領は、合意にさらに時間をかけることを求めた。一体、さらにどのくらいの時間が必要だというのか。
しかしながら、大多数の国々は人権を守る強力な条約に向けて交渉を続けることに表明している。有効な武器貿易条約(ATT)の成立は時間の問題だ、と活動家たちは今も楽観視している。
ニューヨークの国連本部での4週間にわたる交渉が終了するにあたり、90カ国以上が「早期の条約締結に向け努力を継続する」という共同声明を発表した。
ロシアと中国が追随した米国の先送り提案は、交渉土壇場の最終日になされた。
アムネスティは、無責任で野放し状態の武器取引を防止する必要性を強く認識して、この条約の実現に向けて20年近く活動してきた。一般市民に向けて武器を使用する国に、他国がその武器を移転した直接的な結果として、何百万人もが殺され、傷つき、強かんされ、自宅から強制的に避難させられている。
また、武器取引に規制がないため、アフガニスタン、ソマリア、コンゴ民主共和国、コロンビアなどさまざまな国の独裁者の手に武器がわたり、独裁者らが一般市民に危害を加えることが続いている。
今回の交渉は、世界の指導者たちにとって試金石であった。数ヵ国の強国は、世界の期待に応えず、政治的な損得を選んだ。この少数派は今日の世界の潮流に逆らえただろうが、長くは続かないだろう。強力な武器貿易条約を求める大多数の国々は、年内の条約採択に向け強い働きかけを続けなければならない。
中国、ロシア、米国に指導力が欠如していることだけが、条文のとりまとめの障害ではなかった。アルジェリア、エジプト、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、シリアによる妨害は、理不尽だが予想はできた。
条約の草案は、10月の国連総会に送られることになりそうだ。
国際人権法と国際人道法は、草案の核として残った。これはどういう最終合意でも人権条項を確実に盛り込むよう、多数の国々が首尾一貫して努力してきた結果だ。
アムネスティは、この草案は協議を前進させる堅固な基盤だと信じているが、一方ではいくつかの重大な懸念が残っている。
もし年内に合意に達したならば、歴史上初めて、各国は一般市民を武器の脅威から保護することを念頭に、武器移転を許可するか否かを決定する義務を負うことになる。
アムネスティ国際ニュース
2012年7月27日