- 2012年7月12日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:変革を求める中東・北アフリカ
シリアでは多,くの市民のかけがえのない命が奪われ続けている(c)AI
シリアにおける武力紛争は、さらなる拡大と悪化の一途をたどっている。激化する弾圧と虐待の流血の連鎖を終わらせるために、断固とした対策が必要である。
アムネスティは、シリア政府への武器移送を止めさせるために禁輸措置をただちに実施すること、国連安保理が国際刑事裁判所の検事に事態を付託すること、およびバシャル・アル・アサド大統領と側近たちの資産を凍結することを要請する。
反政府武装勢力による虐待の報告が増えている状況にあって、関係諸国は反政府派への武器移送を止めるべきだ。そのような武器は、戦争犯罪やその他の人権侵害のために使用される恐れがある。
また、政府軍と反政府軍による人道に反する犯罪、戦争犯罪、他の重大な人権侵害を監視し、調査し、広く報道するために、人権問題監視団の派遣をアムネスティは要請する。
「シリアの悲惨な状況を、単に手をこまねいて見ているだけの時期は終わりました。16ヵ月以上におよぶ抗議と混乱の間に、1万2000人以上が殺害されたのです」とアムネスティの中東・北アフリカ部副部長アン・ハリソンは述べた。
「シリアの友人」は、断固たる対応を
フランス、米国、英国、ドイツ、アラブ国家のサウジアラビアとカタールを中心とする「シリアの友人」は、国際機関とEUやアラブ連盟の諸国など60カ国からなる国際組織で、シリアの暴力を止めさせるために西側諸国とアラブ諸国を調整する役割を果たしている。
「「シリアの友人」が、国際法の下で犯罪を終わらせ、正義と真実と十分な補償を犠牲者にしっかり提供する明確な案が出ることを期待します」とハリソンは述べた。
「「シリアの友人」は、国際刑事裁判所に事態を付託し、シリア政府へのいかなる武器や関連設備の移送を阻止する禁輸措置を課し、アサド大統領と側近の資産を凍結するために安保理に影響力を行使しなければなりません」
民間人を保護するために反政府軍に武器を供給しようとしているいかなる国も、これらの武器が国際法に反する犯罪に使用される危険性がないかどうか、客観的情報に基づいて、厳格な判断をしなければならない。
これらの武器が戦争犯罪やその他の虐待行為のために使用される可能性があるならば、その移送は阻止しなければならない、とアムネスティは確信している。
最近開かれたリベリアのテイラー元大統領を裁くシエラレオネの国際特別法廷は、戦争犯罪と人道に反する犯罪に使用されることを知りながら、政府軍や反政府軍に武器を提供した政府関係者は、そのような犯罪に加担したとして刑事的に責任を問われることになる、と裁定した。
ロシアはパリ会議には出席しないと発表した。ロシアは、中国とともにシリアに関する安保理決議で2回にわたり拒否権を行使した。またシリア政府に対する最大の武器供給国だ。
両派が加担する虐待行為
16ヵ月以上の抗議と混乱のなかでの犯罪は、そのほとんどに治安部隊が加担している。同時に、自由シリア軍など反政府武装勢力による戦争犯罪など、重大な虐待行為の報告をアムネスティは数多く受け取っている。
それらの報告によれば、反政府軍は捕虜とした治安部隊隊員の即決処刑や違法な殺害、民間人の誘拐、拷問や虐待、子どもの残酷な利用、武器の無規律な使用と保管などに関わっている。
武力紛争にあっては、反政府武装勢力をはじめとしたすべての当事者は、国際人道法の規制を受ける。国際人道法の重大な違反は、戦争犯罪である。
「シリアでは昨年の政府による弾圧以来、人道に反する犯罪が多発している。最近の数ヵ月は政府軍と反政府軍との間で闘いが激化するにつれて、戦争犯罪の証拠も増加しています」とアン・ハリソンは述べた。
「安保理がシリアの事態を国際刑事裁判所に付託するならば、双方で国際法における最も重大な犯罪に関わった者たちは、調査と起訴を受けます」
「シリアの友人」各国は、戦争犯罪、人道に反する犯罪、他の国際法に反する犯罪を調査し起訴する責任を果たし、各国の裁判所でこれらの犯罪に関する普遍的な司法権を、死刑を適用しない公正な裁判によって行使するよう、アムネスティは要請する。
国際的な調査・訴追合同チームを設置することによって、「シリアの友人」の政府は調査の効力、逮捕の可能性、起訴の調整を促進することができる。
シリアにおける平和の構築は、国際法に反する犯罪に対する恩赦や同様の措置の可能性を排除したものでなければならない。
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アムネスティ国際配信ニュース
2012年7月5日
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