先住民族/少数民族 - タイ国内の先住民族

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タイの人口約6000万人のうち、タイ族が約85%と圧倒的多数を占め、山岳民族とされる少数民族は全人口の約1.5%(約93万人)です。主な少数民族として、カレン族、モン族、ラフ族、アカ族、ミェン族、ティン族、リス族、ルワ族、カム族、マラブリ族等が挙げられます。彼らの多くは、 200年以上前から中国南部雲南付近から南下し、ミャンマーやラオスを経てタイ北部にたどりついたと見られています。

第二次世界大戦後、しばらくの間、タイ政府は山岳民族を警戒してはいませんでした。しかし、東西冷戦下、山岳民族と共産主義が結びつくことを警戒し、タイ政府は山岳民族への同化政策を推し進めました。まず、山岳民族の現金収入源だったケシ栽培を1958年に禁じました。山岳民族の多くが暮らすタイ北部や北西ラオス、東北ミャンマー一帯は、「黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)」と呼ばれ、アヘンの原料となるケシが古くから栽培されてきた地域です。また、タイ政府は彼らの伝統的な焼畑農業をやめさせ、低地への再定住を促しました。

1974年、タイ政府は山岳民族にも国籍を与えることを決議しましたが、現在でも山岳民族の四分の一は無国籍であるといわれています。国籍取得の条件が満たせないことや、満たしていても、政府の認定作業が遅れていることなどがその原因です。国籍を取得するには、出生届を役所に提出し、市民権があることを証明する身分証明書を得て、さらに山岳民族が高地で生活するには高地民居住許可証も取得する必要があります。しかし、こうした書類は高地か ら離れた町で手続きをしなくてはならず、費用もかかります。現金収入の乏しい彼らには大きな負担となります。

無国籍であると、移動の自由や土地所有の自由などがなく、教育、医療も十分に受けられません。また、土地所有権がないと、彼らの暮らす土地が開発され、土地を奪われるだけでなく、そこで働く労働者が山岳民族の女性をだまして妊娠させることも度々起きています。山岳民族の女性が人身売買の対象となり、日本やマレーシア、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国などへ労働力として送られることもあります。

アカ族のミジューさんは、こうした山岳民族の現状を改善するために活動していました。2002年、チェンマイ県にあるミジュー氏の自宅は警察によって2度荒らされ、ミジューさん本人は突然はっきりとした理由もないまま、逮捕されました。また、彼女の家族も警察に拘束されました。後日、釈放されましたが、この事件は、山岳民族の権利を求める活動に対する脅迫といえます。

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