1500年にポルトガル人にブラジルが「発見」された当時、トゥピやグアラニといった先住民族の人口は100万から300万人程度と推定 されています。しかし、その後の白人による虐殺や奴隷狩り、重労働、さらに疫病などにより少なくとも100近い民族が消滅し、現在の人口は20万人程とみ られています。
1960年代に入り、当時の軍事政権が開始したアマゾン開発は先住民族に大打撃を与えました。日本の支援によるカラジャス鉄鉱山の開発 (大カラジャス計画)をはじめとして、森林の商業伐採、牧草地の開発、ダムや鉄道・道路建設などが進み、先住民族は土地を追われ、居住地域を分断され、伝 統的生活が維持できない状況に追い込まれました。
さらに、1970年代終わり頃からアマゾン川流域で砂金採掘が活発化し、採掘中に使用される金属水銀による環境汚染が起こりました。約3000トンのもの水銀が放出されたとみられ、先住民族をはじめアマゾン川流域に暮らす人びとへの健康被害が確認されています。
またアマゾンには、ここ数十年の間に外部社会と接触した先住民族や、いまも外部との接触を持たない未接触民族の人びとが存在します。現在彼らは、入植者が持ち込んだ結核やマラリアなどの疫病、開発業者による虐殺にさらされています。
現在、政府機関として国立インディオ基金(FUNAI)が、先住民族保護区の画定を行い、教育や医療などの分野で先住民族への支援を行っています。しかし、同機関は国家の開発計画のために先住民族を居住地から移動させる任務も負っており、その活動には限界もあります。
近年では、開発業者から自らの土地を守ろうとする先住民族が殺害される事件が続発しており、2007年には76人が殺害されています。そ の多くが農園主や森林業者に雇われた警備員の犯行とみられています。ブラジル南西部のマトグロッソドスル州だけで40人以上が殺されています。2009年 2月、同州にあるグアラニ・カイオワ族の村を警察隊が早朝に襲撃し、家々や村の学校を破壊し、金銭や家財道具を奪いました。彼らは同村のリーダーであるカ リト・デ・オリヴェイラら4人を、武器の不法所持、犯罪集団の組織化などの容疑で逮捕しました。その際、警官たちは、「この豚どもを殺そう、そうすれば悪 を根こそぎにできる」と大声で叫んだといいます。同州の先住民族は、大豆農地や牧草地の開発により土地を奪われ、地主や州当局による暴力的な立ち退きにさ らされているのです。