国際人権法は、国際的なルールのうち人権に関するさまざまな条約の総称です。また、それぞれの条約に参加した国は、条約ごとに定められている義務を果たすことが求められます。その義務を果たすために、国際人権法ではいくつかの方法を提示しています。その方法は大きく分けるとその参加国内での実現をはかる方法と、国際的に実現をはかる方法(仕組み)に分けられます。
参加国内の人権が守られる仕組みがきちんと機能し、国際人権法の定める人権基準が守られることが一番良い状態です。その状態を保つため、国内の仕組みだけでは人権が十分に保障できないときには、国際人権法が持つ様ざまな仕組みがその状況を改善させ、各国国内で人権が守られる仕組みを実現するための有効な手段となります。
ここでは国内と国際、それぞれの仕組みをいくつかご紹介します。
国内での仕組み
国内人権機関
国内人権機関とは政府から独立した公的機関を指し、個人からの人権侵害に関する通報を受けることが可能です。その通報をきっかけとし、人権が守られるように調査・活動を行い、被害者の人権救済を図ることができます。また必要に応じて、政府に対して人権が守られるよう勧告を行ないます。
特に条約参加国の国内における人権条約の監督役として機能することが期待され、人権条約がしっかりと守られるように働くことがこの機関の主な目的です。
一方で参加国内のNGOは、国内人権機関の設立に向け、国会議員への働きかけや、国内人権機関について市民に対して基本的な情報提供をすることで、様ざまなサポートをしています。
裁判での適用
国内の裁判所は、人権侵害を受けた人びとの訴えを受け、法律や政府の政策が人権に沿っているか、あるいは個人や団体の行為が人権条約に違反していないかどうか、チェックすることがあります。
裁判において、人権条約がそのまま適用されることもあれば、間接的に憲法や法律を適用する際の基準として参照されることもあります。
裁判の判決で積極的に国際人権法が活用されることで、個々の事件における人権救済が実現されます。そして、国際人権基準に合致した判例が蓄積されていくことで、法律や制度が人権条約に沿ったものとなることが期待されます。
国際的な実現をはかる仕組み
政府報告書
条約参加国の政府に条約を守っているかどうかを定期的に報告させ、専門家を集めた特別な委員会(条約機関)において審査する仕組みです。
個人通報制度
人権救済を訴える個人から、一定の条件のもとでの通報を受理し審査を行ないます。詳しくは、「個人通報制度とは」のページへ
調査制度
条約により、国際的な監視団が直接参加国を訪問し、調査することもあります。