国際刑事裁判所 (International Criminal Court,略称:ICC)は、国境を越えて、各国際機関から独立して、人権侵害の加害者を裁くことができる、歴史上初めての「国際的に活動する常設の普遍的な刑事裁判所」です。 国家や武装グループ等の集団を裁くことはできず、加害者個人を裁きます。国内でICCの対象となる犯罪を裁くことが不可能、もしくは裁く意思のない場合にのみICCで裁くことができる仕組みになっています。
ICCが取り扱える事件とは
ICCは、以下の場合にのみ個人を裁判にかけることができます。
- 「ローマ規程」というICCの設立に関する条約を批准(注:その条約を守ることを約束すること)した国の領域内で犯罪が行われた場合。
- 国がローマ規程を批准していなくても、その国がICCで個人を裁くことを許可した場合。
- 国際社会の平和と安全を脅かす状況であり、国連安全保障理事会がその事態をICCで裁くことを依頼した場合。
- ローマ規程の締約国の国民が加害者である場合
また、ICCは2002年の設立以前に起きた事件は取り扱うことができません。
ICCが裁くことができる犯罪
ICCは、次のような罪を犯した個人を裁くことができます。
- 『ジェノサイド罪』(集団殺害罪):特定のグループを狙った集団虐殺や集団レイプなど。
- 『人道に対する罪』:拷問や、女性や子どもの人身売買、強制失踪(注:国家や政治組織により行われる強制的な逮捕や誘拐のこと)など。
- 『戦争犯罪』:武力紛争下において罪のない一般市民の殺害、平和維持活動をしている人への攻撃、学校や病院などの軍事目的ではない建物への攻撃など。
ICCが秘めている可能性
ICCには、 『ジェノサイド罪』や 『人道に対する罪』などの重大な罪を犯した個人を裁判にかけることにとどまらず、 次のような効果も期待されています。
- 重大な罪を犯そうとする人がその犯罪を行うのを思いとどまらせることができる(戦争犯罪を抑止する効果)
- 事件の早い段階で調査や訴追に乗り出すことによって、紛争の早期解決や一般市民の犠牲を減少させることができる
- 軍事力による解決ではなく、司法による解決という道が開ける
- 各国の国内の司法制度を改善させるきっかけとなる
- 加害者を公正に裁くことで、人権侵害の被害者のための正義の回復に貢献できる
- 「免責」(注:罪を犯した人が、裁かれず処罰されないままになってしまうこと)が繰り返される連鎖を断つことができる。
これらの機能を現実のものとしていくためには、より多くの国々が「ローマ規程」を批准する必要があります。
ICCの課題
ICCには米国や中国、ロシアなどの主要国をはじめ、いくつかの国々はいまだ参加していません。そのため、戦争犯罪等が発生してもICCによる訴追ができないため、加害者が処罰を受けない可能性があります。実効性のあるICCを実現するためには、世界のすべての国々の参加が不可欠です。すべての国の参加を実現するためには、私たち市民による国や地域を越えた協力と地道な努力が必要です。
国際刑事裁判所の締約国リスト
※ICC公式サイト2012年3月現在掲載分より。国名と締約年月日。地域名分類はICCによる。
アフリカ諸国
ブルキナファソ 1998年11月30日 |
セネガル 1999年2月2日 |
ガーナ 1999年12月20日 |
マリ 2000年8月16日 |
レソト 2000年9月6日 |
ボツワナ 2000年9月8日 |
シエラレオネ 2000年9月15日 |
ガボン 2000年9月20日 |
南アフリカ 2000年11月27日 |
ナイジェリア 2001年9月27日 |
中央アフリカ 2001年10月3日 |
ベニン 2002年1月22日 |
モーリシャス 2002年3月5日 |
ニジェール 2002年4月11日 |
コンゴ民主 2002年4月11日 |
ウガンダ 2002年6月14日 |
ナミビア 2002年6月20日 |
ガンビア 2002年6月28日 |
タンザニア 20028月20日 |
マラウイ 2009年9月19日 |
ジブチ 2002年11月5日 |
ザンビア 2002年11月13日 |
ギニア 2003年7月14日 |
コンゴ 2004年5月3日 |
ブルンジ 2004年9月21日 |
リベリア 2004年9月22日 |
ケニア 2005年5月15日 |
コモロ 2006年8月18日 |
チャド 2007年1月1日 |
マダガスカル 2008年3月14日 |
セーシェル 2010年8月10日 |
チュニジア 2011年6月22日 |
カーボヴェルデ 2011年10月11日 |
アジア太平洋諸国
フィジー 1999年11月29日 |
マーシャル諸島 2000年12月7日 |
ナウル 2001年11月12日 |
キプロス 2002年3月7日 |
カンボジア 2002年4月11日 |
モンゴル 2002年4月11日 |
ヨルダン 2002年4月11日 |
タジキスタン 2002年5月5日 |
東ティモール 2002年9月6日 |
サモア 2002年9月16日 |
大韓民国 2002年11月13日 |
アフガニスタン 2003年2月10日 |
日本 2007年7月17日 |
クック諸島 2008年7月18日 |
バングラデシュ 2010年3月23日 |
フィリピン 2011年8月30日 |
モルディブ 2011年9月21日 |
バヌアツ 2011年12月2日 |
東ヨーロッパ諸国
クロアチア 2001年5月21日 |
セルビア 2001年9月6日 |
ポーランド 2001年11月12日 |
ハンガリー 2001年11月30日 |
スロベニア 2001年12月31日 |
エストニア 2002年1月30日 |
マケドニア 2002年3月6日 |
ボスニア・ヘルツェゴビナ 2002年4月11日 |
スロバキア 2002年4月11日 |
ブルガリア 2002年4月11日 |
ルーマニア 2002年4月11日 |
ラトビア 2002年6月28日 |
アルバニア 2003年1月31日 |
リトアニア 2003年5月12日 |
グルジア 2003年9月5日 |
モンテネグロ 2006年6月3日 |
チェコ 2009年7月21日 |
モルドバ 2010年10月12日 |
ラテンアメリカ及びカリブ諸国
トリニダード・トバゴ 1999年4月6日 |
ベリーズ 2000年4月5日 |
ベネズエラ 2000年6月7日 |
コスタリカ 2001年1月30日 |
アルゼンチン 2001年2月8日 |
ドミニカ 2001年2月12日 |
パラグアイ 2001年5月14日 |
アンティグア・バーブーダ 2001年6月18日 |
ペルー 2001年11月10日 |
エクアドル 2002年2月5日 |
パナマ 2002年3月21日 |
ブラジル 2002年6月20日 |
ボリビア 2002年6月27日 |
ウルグアイ 2002年6月28日 |
ホンジュラス 2002年7月1日 |
コロンビア 2002年8月5日 |
セントビンセント・グレナディーン 2002年12月3日 |
バルバドス 2002年12月10日 |
ガイアナ 2004年9月24日 |
ドミニカ共和国 2005年5月12日 |
メキシコ 2005年10月28日 |
セントクリストファー・ネイヴィス 2006年8月22日 |
スリナム 2008年7月15日 |
チリ 2009年6月29日 |
セントルシア 2010年8月18日 |
グレナダ 2011年5月19日 |
西ヨーロッパ及びその他の諸国
サンマリノ 1999年5月13日 |
イタリア 1999年7月26日 |
ノルウェー 2000年2月16日 |
アイスランド 2000年5月25日 |
フランス 2000年6月9日 |
ベルギー 2000年6月28日 |
カナダ 2000年7月7日 |
ニュージーランド 2000年9月7日 |
ルクセンブルグ 2000年9月8日 |
ドイツ 2000年12月11日 |
オーストリア 2000年12月28日 |
フィンランド 2000年12月29日 |
スウェーデン 2001年1月28日 |
アンドラ 2001年4月30日 |
デンマーク 2001年6月21日 |
オランダ 2001年7月17日 |
リヒテンシュタイン 2001年10月2日 |
英国 2001年10月4日 |
スイス 2001年10月12日 |
ポルトガル 2002年2月5日 |
アイルランド 2002年4月11日 |
ギリシャ 2002年5月15日 |
オーストラリア 2002年7月1日 |
スペイン 2002年10月24日 |
マルタ 2002年11月29日 |