武器の貿易を規制する条約がないことにより、さまざまな形で人びとの生活が脅かされています。では、一体どのような国々が、武器を輸出し続けているのでしょうか?
「武器」がふみにじる、人びとの生活
現在、世界中で起きている人権侵害の60%は、拳銃やライフルなどの「小型武器」と、重機関銃などの「軽兵器」によるものと言われています。
近年の武力紛争でも、小型武器が紛争を激化させる大きな要因となっています。つまり、武器の存在が、より紛争を悪化させ、より多くの犠牲を生んでいるのです。
紛争下においては、武器を持たない普通の市民は、政府軍や反政府武装グループの攻撃の対象となります。また、攻撃に対する盾として利用され、命を奪われる場合も多々あります。そしてその犠牲の多くは、女性と子どもたちです。いうなれば、何の罪もない人びとが、もっとも犠牲となりやすいのです。
また紛争が終わった後も、武器が広く行き渡ってしまったために、兵士の武装解除が進まず、暴力が広がり、停戦交渉が遅れます。また、インフラの再整備などの開発や支援を妨げます。これにより、救われるはずの命がどんどん失われていきます。また子どもたちは学校に通うことができず、識字率も下がっていきます。
もちろん、武器が生活を脅かすのは、戦争時だけではありません。日常の生活においても、銃によって殺される人は後を絶ちません。誰でも武器を手に入れ、使うことができることが、大きな原因のひとつです。
武器を輸出し続ける先進国
では、どのような国々が武器を輸出しているのでしょうか? 実は、国連安全保障理事国である米国、イギリス、中国、フランス、ロシアが、多くの武器を輸出しているなのです。
アジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカへ輸出された武器のうち、その80パーセント以上が、常任理事国から輸出されたものであると言われます。また、ドイツやインド、東欧の国々なども、世界各地に武器を輸出し続けているのです。
たとえば、日々、悲惨な報道がなされているシリア。政府に対する抗議行動の最中に殺された市民の数は、5000人を超えるといわれています。その中には、多くの子どもたちの命が含まれています。
そんなシリアに武器を輸出していた国々には、フランス、イタリアなどの先進国も含まれているのです。
日本も無関係ではない
武器貿易条約(ATT)が規制するのは、軍用の兵器だけではありません。スポーツ用ライフルや猟銃、軍民両用のモノや技術など、日本から輸出されるものについても、移転先で人権侵害に使われる可能性がある場合は、取引しないようにチェックすることが検討されています。 また、輸出だけでなく、輸入や港での積替なども、ATTで規制することが検討されています。こうした場合、日本も現在の貿易管理体制を、いっそう強化する必要があるのです。