イランの人権派弁護士ナスリン・ソトゥデさんが、実刑38年とむち打ち148回の判決を言い渡され、投獄されています。

ナスリンさんが逮捕されてからちょうど1年となった6月13日、ナスリンさんの釈放を求めて、世界中で一斉にイラン当局に署名を提出しました。

イランでは、女性が公共の場で「ヒジャブ」を着用することが義務化されており、ヒジャブの強制に抗議しただけで逮捕や起訴をされた女性たちが多くいます。ナスリンさんはこうした女性たちの弁護を引き受けていました。それが公共の秩序を乱す反体制の活動だとされてしまったのです。

差別的な法律に立ち向かったために、ナスリンさんが不当で過酷な刑を受けたことは、世界に衝撃を与え、アムネスティの釈放を求める呼びかけに多くの人が賛同、200以上の国と地域で計1,188,381筆の署名が集まりました。

アムネスティ日本も、同日、駐日イラン・イスラム共和国大使館に署名を提出しました。あいにく大使は帰国中であったため、直接手渡しすることはかないませんでしたが、オンラインやハガキで集まった署名計4,757筆を、要請書とともに大使館に直接渡しました。

署名にご協力くださった皆さま、ありがとうございました。

アムネスティ日本の事務局長中川英明。駐日イラン・イスラム共和国大使館前にてアムネスティ日本の事務局長、中川英明。駐日イラン・イスラム共和国大使館前にて

人権活動家に対する人権侵害

イランの法律や習慣には、女性に対する差別が根深く残っています。女性が髪の毛を見せたり、派手な化粧をしたり、ぴったりした服を着たりしただけで、いやがらせを受けたり、拘束されてしまうことがあります。外出するときは必ず、「ヒジャブ」を着用し、髪の毛、腕や脚を隠さなければなりません。

ナスリンさんは、イランにおけるこうした女性差別を撲滅するための活動に、人生を捧げてきた著名な女性弁護士です。

ナスリンさんは、2018年6月に逮捕され、「腐敗と売春を煽った」「反体制のプロパガンダ」「公共の場でヒジャブを着用せず、邪悪な行動をとった行為」など7つの罪に問われました。そして2019年3月、すべての罪で有罪となり、合計33年の刑とむち打ち148回を言い渡されました。

イランの刑法では、3つ以上の罪で有罪となった場合、最も重大な罪に対する最も重い刑のみに服すると規定されています。これに従えば、本来の刑期は12年のはずです。

これとは別に、2016年にも在イラン外国公館での会合などが「人権を隠れ蓑にしてスパイに会っていた」とされ、治安関連の罪で5年の刑を受けており、合わせて38年の投獄が科されたのです。別件で5年の実刑判決を受けたことをナスリンさんが知ったのは、今回の件で逮捕された後のことでした。

釈放されるまで運動は続きます

人権侵害に立ち向かうナスリンさんは、決してひとりではありません。6月13日に全世界で署名を一斉に突きつけたことによって、イラン当局による人権侵害が全世界に露呈されました。また、「人権侵害は許さない、ナスリンさんが釈放されるまで活動し続ける」という世界中から集まったメッセージをイラン当局に伝えることができました。

アムネスティ日本支部で集まった4,757筆の署名アムネスティ日本支部で集まった4,757筆の署名

署名にご協力ください

ナスリンさんのように人権侵害で苦しんでいる人が、世界にはたくさんいます。署名にご協力をお願いいたします。

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