2018年11月、東京と大阪で講演会「ウイグル強制収容所から奇跡の生還~オムルベク・アリさんが語る~」を開催しました。
収容所から奇跡の生還を果たした、オムルベク・アリ氏(本名:オムル・ベカリ氏)、収容されている兄の惨状を訴えるため緊急来日したヌーリ・ティップ氏、そして、中国現代史が専門の明治大学講師の水谷尚子氏(アムネスティ日本中国チーム)の3名に登壇いただきました。
会場は満員で、この問題は日本国内でも大きな注目を集めていることを感じられました。アムネスティ日本中国チームの曽我が報告します。
「職業訓練センター」という名の強制収容所
2016年から新疆ウイグル自治区の各地に「職業訓練センター」という名の強制収容所が建設され、カザフスタン人やウイグル人など、トゥルク系のムスリムが収容されています。その人数は定かではありませんが、少なくとも百万人は収容されています。そして、強制収容所のそばには、土葬が一般的なイスラム教では不要な火葬場も建設されているのです。
オムルさんの強制収容所体験
鎖と結束バンドで手足の自由を奪われた状態で現われたオムル・ベカリさん。彼はこの状態で最初の3カ月を強制収容所で過ごしたのです。彼はそのまま強制収容所での体験を話し始めました。
鎖と結束バンドで手足の自由を奪われた状態で現われたオムル・ベカリさん
「12平米の部屋に40~50名が押し込められ、24時間そこで過ごしました。睡眠時間は3時間、革命歌の練習や政治学習、自己批判が毎日行われます。食事の前には中国共産党・習近平・国家への感謝を強要され、きちんと出来ないと食事を取り上げられ拷問を受けます。そして毎週、部屋から4,5名が外に呼び出され、いなくなった人と同じ人数が新たに入って来ます。いなくなった人がその後どうなったかは分かりません。」
話の途中で、彼が嗚咽を漏らす場面が数回ありました。以前は115kgもあった彼の体重は、8カ月後に解放された時には60kgにまで減っていたそうです。現在は90kgまで体重が戻りましたが、精神的にはまだまだ回復していないのです。
中国政府にとってウイグル人は邪魔
2017年3月に強制収容所に入れられ死刑判決を受けたタシポラット・ティップさんの弟、ヌーリ・ティップさんには、大好きなお兄さんとの思い出を交えながらお話しいただきました。
「兄は東京理科大で博士号を取得、中国に戻ってからは数々の教育プロジェクトで成果を上げ、新疆大学の学長も務めた著名な学者です。強制収容所には他にも教育水準の高いウイグル人が多数収容されています。これは、彼らを殺してしまえばウイグル人の教育水準は低くなり、ウイグルは中国政府の思い通りになるという計画の一貫だと思います。中国政府は私達ウイグル人の土地だけが欲しいのです。そこに住むウイグル人は邪魔なのです。私は自分の兄だけではなく、強制収容所に収容されている全員を助けたい。私は日本を第二の故郷と思っています。日本のみなさん、どうか応援してください!」
繰り返される歴史上の残虐行為
オムルさんは訴えます。
「強制収容所は民族浄化のための施設なのです。今、国際社会がこの施設をなくす努力をしなければ、強制収容所は他の地域に広がっていくかもしれません。」
最後は水谷さんの言葉で締めくくられました。
「現在、ウイグルでは文化大革命の時代よりも酷い、いわばポル・ポトのような大虐殺が行われています。私には中国国内に沢山の友人がいますが、私のウイグル人の友人たちは今どこにいるのか全く分かりません。漢人の友人たちには『今あなたたちの国はこんなにひどいことになっています。なんとか自分たちの国を変えて欲しい』と強く訴えていきたいと思います。」
最後に
今、この地球上で信じがたい人権侵害が行われていることに戦慄を覚えると同時に、一刻も早く止めさせなくてはならない、と来場者の皆さんと同様、強く感じました。
アムネスティは、ウイグル族などの少数派に対する弾圧が止み、収容所の人たちの拘束が解かれるよう、今後も、世界中に働きかけていきます。
署名にご協力ください
アムネスティでは、100万人にも及ぶウイグル人やカザフ人たちの不当な拘束をやめるよう、中国政府(駐日中国大使)に要請する署名アクションを行っています。この状況を変えるために、ぜひ、署名にご協力をお願いします。
実施日 | 2018年11月23日(金・祝) |
場所 | 明治大学駿河台キャンパス |
主催 |
明治大学現代中国研究所 アムネスティ・インターナショナル日本 |
実施日 | 2018年11月26日(月) |
場所 | 大阪市立総合生涯学習センター |
主催 | アムネスティ・インターナショナル日本 |
共催 | 神戸大学経済学部梶谷懐研究室 |