11月15日(土)、国際シンポジウム「アジアの拷問をなくすために~フィリピン・日本・台湾から考える」を青山学院大学で開催、70名を超える方に足を運んでいただきました。
拷問の問題を解決するために、日々、奮闘する活動家3名、伊藤和子さん(日本の弁護士、ヒューマンライツナウ事務局長)、オーロラ・パロンさん(フィリピンの医師、人権救済委員会メンバー)、スー・チェン・ホさん(台湾人文教育財団メンバー)をお招きし、アジアの拷問をなくすために、一人ひとりにできることについて一緒に考えました。
当日は、日本の拷問・えん罪事件の被害者、袴田巌さんが会場に登場する場面も。同様の苦難を経験したゲストの一人、スーさんは袴田さんの手を固く握り、「私たちの犠牲が、アジアの拷問をなくす一歩になるよう、ともに努力していきましょう」と語りかけました。
拷問をなくすための具体的な防止策の必要性
国際社会が拷問をなくすと誓って30年。拷問等禁止条約には156カ国が批准しています。しかし、今でも拷問を行っている国は141カ国に上り、その数には身近なアジアの国々や日本も含まれます。
拷問をなくすには、各国が「拷問はだめだ」と宣言するだけではなく、拷問を防止するために具体的な対策や制度を講じることが必要だと3人は訴えます。それは、例えば、弁護人や医師、家族が被収容者と面会できること、取調べ中の弁護人の立会い、取調べ全過程の録音・録画、被害者に十分な救済を確保することです。
残念ながら、これらの制度が十分に確立されていないのが現状です。フィリピンでは、過去の被害者を救済するという動きがでているものの、警察による拷問が蔓延しています。台湾では、拷問を防止するさまざま具体策が制度としてあるものの、実際の運営面で問題が残っています。そして日本においては、拷問・えん罪の温床になっているとして、国連から何度も是正勧告を受けているにもかかわらず、「代用監獄」など人びとを長期かつ密室で取調べをすることができる制度を維持し続けています。
拷問をなくすために、私たちにできること
ゲストの3人が揃って会場に訴えていたことは、「拷問を他人事ではなく自分事として考え、問題に関心をもち続けてほしい」ということでした。
オーロラさんが初めてアムネスティと出会ったのは、彼女が獄中にいるときでした。フィリピンのマルコス政権時代、オーロラさんは、反政府派を助けたとして刑務所に1年半拘禁されました。その間、独房に入れられるなどの精神的な拷問を受け、家族と面会できたのもほんの数回だけだったといいます。そんなときに、アムネスティのメンバーから囚人に届く手紙をみて、誰かが問題に関心をもってくれていることを知れたことが心の支えになったといいます。
また、台湾では、スーさんの事件がきっかけとなって、取調べ中における弁護人の立会いや取調べの可視化などが進みました。しかし、これらの改革を推し進めたのは、彼だけの力ではありません。スーさんの無罪を信じて闘い続けてくれた父親、事件を担当した弁護団、関心をもち抗議活動などに参加してくれた市民一人ひとりが、国内外のメディアの関心を集め、国を動かしたのです。
人びとの関心がなければ、被害者たちを支えることも、国を動かし拷問を防止するための具体策を確立させることもできません。拷問をなくす責任は、私たち一人ひとりにあるのです。
お忙しい中、当日会場にご来場いただいた皆さま、シンポジウム開催にあたりご協力いただいた青山学院大学大学院・法学部教授申先生、ボランティアスタッフの方々、通訳を務めていただいた熊野里砂さん、李梅さん、そしてご出演いただきました伊藤和子さん、オーロラ・パロンさん、スー・チェン・ホさん、ありがとうございました。
写真:(上)会場の様子、(左下)袴田さんと握手するスーさん、(右下)東京事務所の近くでお茶をするオーロラさん
開催日 | 2014年11月15日(土) |
開催場所 | 青山学院大学青山キャンパス |
主催 | アムネスティ・インターナショナル日本 |