妊娠していたベアトリスさん(22歳)は、腎臓疾患や難病の全身性エリテマトーデスなど、かかえていた重い病が悪化し、妊娠状態が続けば命は助からない状況でした。
妊娠4カ月半を過ぎ、すでに胎児は無脳症でその脳と頭蓋の大半を失っており、出産前に死亡するか、出産しても数時間から数日間の命だろうと医者から判断されていたにも関わらず、エルサルバドルでは妊娠中絶を全面的に禁止しているため、医師は起訴されるおそれからベアトリスさんに対し、救命医療を施しませんでした。
アムネスティは彼女の救命措置を求め、2013年5月~6月の2カ月にわたり、世界中でアクションを展開。日本支部でも、緊急行動(UA)やオンライン・アクションを行いました。
世界中からの要請に応え、6月3日、エルサルバドル政府は重い腰をあげ、彼女が必要な治療を受けることを許可しました。
帝王切開を受け一命を取り留めたベアトリスさん本人から、アクションに参加してくださった一人ひとりに、感謝を伝える手紙が届きました。
ベアトリスさんからのメッセージ
皆様へ
私のことを支え続けてくれたあなた方に、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
もしあなた方がいなかったら、私は病院での苦しみに耐え切れなかったことでしょう。とても厳しい状況を乗り越えることが出来たのは、あなた方のサポートがあったからです。
これ以上、他の女性が私と同じ体験に苦しまない様に、私の事例が皆さんの役に立つことを願います。
これから息子や家族と共にいられることを思うと、とても幸せを感じます。
ベアトリス
ベアトリスさんからの手紙(直筆)
これからも続くアムネスティの取り組み
エルサルバドルでは、女性や少女に対する暴力が多く報告されています。国家警察によると2011年1月から10月までの間に477人にのぼり、その多くが誘拐の後に強かんされています。特に 深刻なのは先住民族の女性たちへの暴力であり、根底には彼女たちへの差別があると言われています。
重い病気を抱え母体の健康が危ぶまれても、強かんにより望まない妊娠をした女性であっても、中絶が認められることはなく、多くの女性たちが、ベアトリスさんと同じような苦しみを抱えています。
アムネスティはエルサルバドルに限らず、今回の事例のように、世界中の国で女性や少女が、命や健康を守るために必要な治療を受ける権利が認められるよう、活動を続けていきます。活動へのご支援をぜひお願いします。