天安門事件の学生リーダー、そしてアムネスティの元良心の囚人※で民主活動家、王丹さんが、7月2日~7月9日にかけて、来日しました。今回が、日本初来日でした。
来日中は、トーク&ドキュメンタリー映画『亡命』上映の企画や、慶大・東工大での講演、研究者・学生との意見交換などの日程の合間に、記者会見や個別の取材が入り、大変あわただしいものとなりました。しかしそのいずれも満員状態で、多くの方に王丹さんの訴えや中国の現状を知っていただくことができたと思います。
中国は目覚ましい経済発展のさなかにありますが、そのひずみも大きくなってきています。そしてそのひずみに立ち向かう活動家たちへの弾圧も厳しさを増しています。
このような状況をどのように変えられるのか。王丹さんが繰り返し語っていたのが、市民の力、特にインターネットを使いこなすような「若い力」に希望がある、ということです。
「23年前のことを若い人が知らないことは自然なこと。それに検閲の壁を越えて知ろうとする人はいる。そういう人がいることが大事。知るためのルートはある」と、確信をもって話していました。
中国政府はインターネットについて規制を加えていますが、中国の若い人はどんどん規制を乗り越えています。そのような若い人たち同士がつながり、また海外にいる王丹さんたちのような活動家や、アムネスティのような人権団体ともつながることが、中国を変えていくことになるということです。
「今は政府に異を唱えて行動する人が少ないが、中国の市民社会は形成され始めたばかり」「中国が変わるためには政府ではなく人びとが立ち上がるしかない」と、王丹さん。
トーク&映画上映会や講演会の会場でも、「若い力」の可能性を感じることができました。日本や中国の若い人たちが、質疑応答でも熱心に手を挙げ、時にはプログラムが終了したあとも王さんを20~30人で囲んで、話を続ける姿が見られました。
また今回は、準備にも多くの若い人たちが、ボランティアとしてかかわりました。天安門事件のときはまだ生まれていなかった人もいましたが、事前に映画「亡命」を見たり、事件当時に北京特派員だった人の話を聞いたりして、王丹さん来日に備えました。
王丹さんが離日直前に残したメッセージを紹介します。
「私たちの訪日のために熱心に働いてくださったアムネスティのみなさんに、感謝します。今回は日本の美しい自然や景色と触れる時間はなかったものの、多くの日本の方々と触れ合うことができました。
その中で、みなさんの中国に対する関心と熱意を感じました。そして多くの方と友情を結ぶことができました。これからは、今回結んだ友情を大切にし、さらに発展させたいと考えています」。
※「良心の囚人」:暴力を用いていないのに、思想・信条、民族や宗教などを理由に不当に投獄された人びとのこと。
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