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忍び寄る監視システム
「テロとの闘い」や「国家の安全を守る」という口実の下、政府にとって都合が悪い活動を行う人権活動家やジャーナリスト、弁護士、学者などに「テロリスト」などのレッテルを貼り、弾圧し、それを正当化する国家も少なくありません。そんな状況の下、世界中で行われているのが「監視」です。中でも「デジタル監視」は近年、デジタル技術を駆使した巧妙な監視が問題となっています。
デジタル監視には、メール、ネットの閲覧履歴、チャット、電話などの市民の通信データを無差別に大量に収集し、それらの情報の中から必要な時に必要な情報を抜き取る「大量監視」と、特定の人物や組織に対象を絞ってデータを収集する「標的を定めた監視」の2種類があります。
「標的を定めた監視」の対象となると、これまでも行われてきた盗聴などの他、近年ではパソコンやスマホなどの端末に本人の気付かないうちにマルウェアやスパイウェア(※1)がインストールされプログラムを破壊したり、フィッシング(※2)などでIDやパスワード、クレジットカード情報などの個人情報が抜き取られます。
アムネスティの調査で、少なくとも2017年以降、モロッコの著名な人権活動家2名が「標的を定めた監視」の対象となり、スパイウェア「ペガサス(※3)」によってデータを収集されていたことが明らかになっています。また、英国やコロンビアでは警察がジャーナリストを監視下に置いており、アラブ首長国連邦(UAE)では政府がスパイウェアを使用して活動家を追跡していました。エチオピアでも政府が反体制派の動向をデジタル監視システムで探っていました。
(※1)マルウェアは悪意を持ったソフトウェアの総称。スマートフォンやパソコンなどの端末に侵入すると、機密情報を持ち出したり、端末のプログラムを破壊したりする行動を起こす。スパイウェアはマルウェアの一種。ユーザーに気づかれないよう秘密裏に端末に不正侵入し、ユーザーの行動履歴や個人情報を盗み出す。
(※2)本物そっくりな偽のウェブサイトに誘導し、ユーザーネームとパスワードを騙し取る。多くの場合、メールなどで偽のページに誘導するリンクが送られ、それをクリックすることで被害に遭う。
(※3)イスラエルの企業であるNSOグループが開発。活動家の携帯に送付されたメッセージに記載されたリンクを開くと、「ペガサス」がインストールされる仕組みになっていた。カナダのトロント大学にあるインターネットの情報統制などについて研究しているCitizen Labの調査では少なくとも45カ国で特定の組織や人物を標的としたデジタル監視に使用されていたことが判明している。
標的にされた人権活動家
「声」を消してはいけない
多くの場合、デジタル監視は高度な技術を使用して秘密裏に行われるため、標的になっていることを証明するのは困難です。実際に監視が行われているかどうかに関わらず、監視の標的になるかもしれないという恐怖感は人権のための活動を委縮させ、「声」を上げることを躊躇させてしまいます。また抜き取った情報を悪用、あるいは操作して、罪をでっち上げるようなことも起こっています。個人情報が晒されて攻撃の対象になったり、好ましくないレッテルを貼られたりすることもあります。ストレスや恐怖から心を病んでしまう場合もあります。こうした影響は徐々に声を上げにくい社会を作り上げてしまいます。
しかし人権活動家の「声」こそ、より良い社会の実現ためには必要不可欠なものです。また、人権活動家の「声」を消さないために、私たち一人ひとりが「声」を上げ続けていくことも、とても重要です。
動画で学ぶ、監視問題
2020年10月と2021年4月、ゲストに監視問題の専門家、小笠原みどりさんをお招きして、2回にわたり監視問題を考えるセミナーを開催しました。