2010年は、アウンサンスーチーさんの釈放や劉暁波さんのノーベル平和賞受賞など、明るいニュースはあったものの、人権を擁護しようとする活動家の逮捕、拘禁が続きました。これを受け、創立40周年を迎えたアムネスティ日本は、会員のみなさまと一緒にさまざまな国際的なキャンペーンを精力的に展開しました。
<人間らしく生きたい>キャンペーン(国際)
無罪判決で釈放されたラウル・ヘルナンデスさん
2010年9月、ニューヨーク国連本部でミレニアム開発目標のハイレベル会議が開催されました。これに向けてアムネスティは妊産婦の健康問題に焦点を当てた国際的なキャンペーンを展開し、日本支部も日本政府宛の要請書を送るとともに、5月の母の日に合わせた署名アクションを展開しました。
3月、メキシコの先住民族NGOで、良心の囚人であるラウル・ヘルナンデスさんに焦点を当て、「ラウルさん応援写メ」アクションを実施。集められたメッセージ付写真を5月にラウルさん本人に送付しました。日本支部もあわせ、各地のアムネスティ支部から1000以上の写真メッセージが集まりました。ラウル・ヘルナンデスさんは、2010年8月27日、無罪判決で釈放されました。
欧州各地におけるロマの人びとの人権問題をウェブサイトで特集し、イタリアの強制立退きとスロバキアの分離教育に関するオンライン・アクションを勢力的に行いました。2010年8月、スロバキア政府は教育現場における人権に基づく分離教育の撤廃を公約しました。
アウンサンスーチーさんの釈放(国際)
キャンペーン・チームが制作したアウンサンスーチーさんのモザイク画。一般の人びとに署名をしてもらい、モザイク画を完成させるアクションを7月のアースガーデンで実施しました。
ミャンマー(ビルマ)では、20年ぶりとなる総選挙が実施されました。これを受け、アムネスティ日本は、表現の自由とすべての政治囚の釈放を中心に置き、アジア太平洋地域のアムネスティの支部とともにキャンペーンを行いました。
10月、日本政府によるビルマ政府に対する積極的な働きかけを求める署名を実施し、約2300筆の外務大臣宛の署名と要請書を山花外務政務官に手渡し、ビルマの人権状況改善に向けて日本政府の一層の努力を求めました。アウンサンスーチーさんは11月13日、7年間の自宅禁固を解かれ、釈放されました。
ガザ紛争の犠牲者のために公正な裁きを(国際)
他団体と協力し、ガザ紛争に関する戦争犯罪や人道に対する罪の追及、ガザ封鎖解除、イスラエル軍によるパレスチナの家屋破壊の問題について日本政府に積極的に働きかけました。1月29 日、西村政務官(当時)を訪問し、ガザ紛争後の状況や、戦争犯罪についての国連調査に関する日本政府の投票行動について協議し、国連調査結果を支持するよう要請しました。
10月30日には、パレスチナがオリーブの収穫時期であることから「パレスチナ収穫祭」と題し、パレスチナに対するイスラエルの分離政策に焦点を当てた映画『アイアン・ウォール(鉄の壁)』の上映と現地報告を中心とした集会を他団体と共同開催しました。
劉暁波さんのノーベル平和賞受賞(国際)
11月、獄中にある劉暁波さんのノーベル平和賞受賞決定を受け、釈放を求める緊急アクション・リーフレットを作成し、6000部近を配布しました。また、中国チームが劉暁波さんに直接送るグリーティング・カードを作成し、好評を得ました。中国チームのメンバーがノルウェーを訪問し、ノーベル平和賞授与式やノルウェー支部主催のデモの様子をツイッターで中継するなど、新しいツールを使ったアクションを展開した年でもありました。
急務となっている国内人権機関の設置(国内)
この年アムネスティ日本は、長年にわたって国連から勧告を受けていた国内人権機関の設置に向けて、さまざまな働きかけを行いました。人権市民会議など他団体とともに「国内人権機関と選択議定書を実現する共同行動」を起こし、院内集会を開催し、NGO共同要請書の提出など、政府に働きかける共同行動に参加しました。また、取調べの可視化について全国会議員に政策アンケートを実施しました。
取調べの可視化の実現に対する働きかけ(国内)
取調べの可視化にも積極的に取り組みました。7月1日、アムネスティ日本、監獄人権センターなどの呼びかけで「取調べの全面可視化を求める共同声明」を発表しました。賛同団体は最終的に45団体に達しました。
その他、6月9日に、政権与党である民主党の人権公約(マニフェスト)をチェックする院内集会を他団体と共同開催し、国会議員を含む70人以上が参加しました。
日弁連、監獄人権センター、国民救援会、人権市民会議などとともに、12月2日に集会「待ったなし!今こそ可視化の実現を〜冤罪はこうして作られる」を開催しました。集会では、足利事件で再審無罪となった菅家利和さんなど冤罪事件の被害者、ジャーナリスト、元裁判官などがさまざまな角度から全面可視化の必要性をアピールしました。
死刑のない社会に向けて―孤立する死刑存置国(国内)
10月10日の世界死刑廃止デーに行われた銀座でのデモ行進。多くのメンバーが一丸となって死刑の廃止を訴えました。アムネスティの調査では、2010年に少なくとも23カ国が死刑を執行したとみられています。
死刑廃止に向かう過去10年の進展の結果、死刑存置国は次第に孤立しつつあります。そのような状況の中、アムネスティ日本はADPAN(死刑に反対するアジアネットワーク)と協力しつつ、「死刑に異議あり! 」キャンペーンを監獄人権センターとともに推進しました。4月に中国政府が日本人死刑囚の死刑執行を行った際には、五夜連続で中国大使館前での抗議行動を行いました。
また、監獄人権センターおよび死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90と連携しつつ、日本の死刑廃止に関する活動を進めました。5月および9月に法相と面会し、死刑の執行停止や死刑廃止に向けた公的な議論を進めることなどを強く要請しました。
2010年は、アムネスティ日本が呼びかけ団体として参加しているフォーラム90の結成20年にあたり、12月には東京で死刑廃止を訴える大集会を開催し、1800人以上の参加がありました。
難民問題への取り組み(国内)
全国の入管収容施設におけるハンガーストライキや自殺などの痛ましい出来事が起こり、法務大臣宛の公開書簡送付、外国人特派員協会での会見、東日本入国管理センター長への申入れ、執筆等を通じ、情報発信ならびに状況改善のための働きかけを実施しました。
また、関西では世界難民の日に際し、韓国国会議員ファン・ウヨ氏、キム・ジョンチョル弁護士(ソウル地方弁護士会難民人権幹事)、そして日本の辻恵衆議院議員を招いてシンポジウムを行い、あるべき難民制度を検討しました。
企業の社会的責任(CSR)(国内)
鉱山開発に伴う諸問題について、積極的に情報提供を行いました。シンポジウム「世界金融とCSR・SRI」(3月)、鉱山開発に伴って起こる紛争資源をテーマのシンポジウム「私の命まで採掘しないで」(6月)を行い、多くの企業からCSR 担当者が参加、協賛も得ることができました。
また、資源採掘が引き起こす問題が多岐に渡り、人権を軽視する採掘は当然環境を破壊することから、環境系NGOと協働して「エシカル(社会・環境に配慮することを意味する)ケータイキャンペーン」を行いました。
希望のキャンドルキャラバン(国内)
アムネスティ日本支部40周年記念事業として、「希望のキャンドルキャラバン」を5月より開始し、全国のグループなどの協力により大阪、長野、札幌、水戸、沼津、名古屋、静岡、山口など全国各地で世界人権宣言全30条を象徴するキャンドルを灯しました。ダライラマ14世や俳優ニコラス・ケイジにもキャンドルに火を灯してもらい、そのようすをウェブサイトで公開しました。