世界人権宣言の採択60周年を迎えた2008年の活動報告をお届けします。アムネスティ日本は、会員のみなさまの理解と協力によって、国際事務局や各国支部とともに重要な力となることができました。

今年は、グアンタナモ収容上の閉鎖をオバマ新大統領が明言するなど、大きな成果があった年でした。

グアンタナモ収容所閉鎖が現実的に!

新しい大統領バラク・オバマは、合衆国憲法に従ってグアンタナモ収容所を閉鎖すると公言していました。それが偽りの約束にならないよう、アムネスティは閉鎖を要請するアクションを世界各国支部から一斉に行いました。アムネスティ日本も、ウェブサイトからのアクションを中心に実施。オバマ新大統領は、その後グアンタナモの閉鎖を指示しています。

みんなのハガキが被害者を励まし、釈放へ!

ニュースレターを通じ、グアンタナモに収容されている人びとへの励ましの手紙書きを会員に呼びかけました。グアンタナモから感謝の手紙を受け取ったとの報告が、手紙を書いた多くの会員から届きました。手紙書きのあて先となっていた1人、サミ・アルハジさんはその後釈放され、故郷に戻り復職することができました。

人権パスポート日本語版が人気!

act2008_01.jpg2008年は世界人権宣言の採択60周年を迎え、アムネスティ全体で様々な記念イベントが行われました。アムネスティ日本はアムネスティの「人権パスポート」(世界人権宣言とイラストが記載された冊子)の日本語版を作成し、全国のアムネスティ・グループによるイベントなどで、たくさんの方にご購入いただきました。新聞の記事で紹介されたことにより、中学・高校への無料配布が全国規模で実施できました。世界人権宣言の普及に大きな役割を果たせたと思います。

中国の人権状況に注目が集まる

2008年夏に開催された北京オリンピックに向けて、アムネスティは国際的に北京オリンピックキャンペーンを実施しました。これは中国国内の様々な人権侵害について、中国政府に改善を強く求めるものでした。直前の3月に起きたチベットでの弾圧を受け、ウェブアクションだけでなく、長野の聖火リレーの現地で抗議行動に参加するなど大々的にアピール活動を行いました。議員や記者にも情報を提供することが頻繁にあり、中国の人権状況に関してのアムネスティの発言が多くのメディアに取り上げられました。その結果、オリンピックの裏側で中国の人権状況に関心が集まりました。

みんなの力で、よりよい世界を!

アムネスティの活動は、ハガキ書きや国際機関への働きかけなど、地道で時間がかかるものがほとんどです。そのため、すぐに成果が出るものばかりではありませんが、世界中の仲間が、今日も人権改善のためにさまざまな形で活動を続けています。

act2008_04.jpg 2008年12月、イスラエルのガザ爆撃に抗議するため、他団体とともにイスラエル大使館前で集会を行った。写真はアムネスティの声明を読み上げるスタッフ。

act2008_03.jpg 2009年1月、東京・新橋で、2回目となるアムネスティ・フィルム・フェスティバルが開催された。今後2年毎に続けていく予定である。

外国籍の人びとを排斥する風潮に抗議

2007年11月から、ほぼすべての外国人は、日本入国時に指紋と顔写真の生体情報を政府に提出することが義務化されました。この差別と人権侵害の問題に関連して、入管政策、新規導入される予定のICチップの在留カード制度などについて他団体ともに問題性を指摘してきました。これによって、難民申請者とオーバーステイの人びとが完全に社会から排除される危険が生じてきます。今年も引き続き、アムネスティは日本政府にこのような政策を取らないよう働きかけています。

死刑廃止の議論ができる国をめざして

国連総会で死刑執行停止決議採択がされ、世界の死刑執行数が2004年以降減ってきている中、2カ月に1回のペースで死刑が執行されている日本は世界の流れに逆行しています。一方、今年から裁判員制度が始まることで、死刑制度について真剣に考えようという空気も生まれてきました。死刑をとりまく環境が新しい局面を迎えつつあります。

act2008_05.jpg 2008年は死刑廃止の活動が活発に行われた。10月、死刑執行に抗議して国会前でデモを行った。

この時期を逃さず、これまでとは一味違う切り口で死刑廃止を推進しようと、他団体と共同で「死刑に異議あり!」キャンペーンを開始しました。アムネスティ日本で死刑廃止活動を行っている死刑廃止ネットワークセンターは、大阪では1年を通して講演会、報告会などを開催し、東京では新宿ではじめての死刑廃止を訴えるデモ行進を実施し、通りの人びとの注目を集めました。

死刑廃止に向けての新たな1歩となる年でした。

日本の人権改善にも取り組む

10月、10年ぶりに自由権規約委員会の第5回日本審査が行われました。アムネスティ日本からもジュネーブに赴き委員会に働きかけた結果、日本政府に対する厳しい勧告を得ることができました。内容は、国連の人権機関への個人通報制度を受け入れること、死刑制度の廃止を積極的に検討すること、代用監獄制度を廃止すること、日本軍性奴隷制の被害者への謝罪と賠償、加害者の訴追を行うことなどです。日本政府は依然として、勧告を実施する意思を示していません。今後アムネスティは政府に対する働きかけとともに、日本社会に今回の勧告の内容を知ってもらうために活動していきます。

企業にも人権擁護を求める!

企業の社会的責任(CSR)の中で、企業が取り組むべき人権問題に焦点をあてイベントを開催しました。雇用・労働・非正規雇用などの時機にあったテーマで、各企業のCSR部門が毎年発行する報告書をアムネスティが評価するというセミナーを実施しました。このセミナーには多くの企業のCSR担当者が参加し、人権問題への関心の高さがうかがえました。

人権の危機にもすばやく対応

チベット弾圧やガザ攻撃など、緊急な対応を求められる事件に、ウェブアクションや大使館前の抗議行動をすばやく企画し社会にアピールしました。